自民党の総裁選挙が9月7日告示、20日投開票で実施される。きょう開かれた総裁選挙管理委員会(委員長・野田毅元自治相)で正式に決定した。これに先駆けて石破茂氏が立候補を表明している。この時の記者会見で同氏が掲げたのが「正直で公正、そして、謙虚で丁寧な政治」。モリカケ問題が依然としてくすぶる対抗馬の安倍総裁を意識した公約である。石破氏らしい旗印である。個人的には同氏のこうした政治姿勢を高く評価するし、期待もしている。だが、自民党の総裁となれば間違いなく日本の次の総理大臣に指名される人である。願わくばもっと大局的な政治課題を掲げて欲しかった。格差解消とか対米追随の見直しとか、もっと言えば自立国家の模索とか、中長期的な日本の将来展望を示すべきだったという気がする。
モリカケ問題や財務省の公文書改ざん、防衛省の日誌隠蔽問題など、最近の安倍政権は政治に対する信頼感を傷つけることばかりやっている。石破氏の総裁選立候補に当たって掲げた抱負は、安倍政治の負の資産を意識したものだろう。選挙が戦いである以上、対立候補の弱点をつくのは常套手段であり、勝つための戦術であることは十分理解出来る。だが、それは野党が採用する選挙戦術ではないだろうか。石破氏がかつての小沢氏のように自民党を割って、野党と手を組んで首相の座を射止めようというのなら納得出来る。だが、石破氏はそんなことは微塵も考えてはいないだろう。数に頼んで強権的、独善的に政治を進める安倍首相への対立軸として「正直、公正、謙虚、丁寧」という耳障りの良い言葉を並べている。
日本の政治に今必要なのは、アベノミクスに取って代わる経済政策である。三本の矢から成り立つアベノミクスは、デフレスパイラルが懸念されていた日本経済を少なくとも瀬戸際で堰き止めた。デフレは止めたものの相変わらず個人消費は盛り上がりに欠け、少子化にも一向に歯止めがかからない。黒田バズーカによる金融の異次元緩和は続いているものの、2%という物価目標実現への道筋は依然として見えてこない。なぜ、アベノミクスは前に進まないのか。ここに代案を提示し「安倍に変わって俺がやる」といえば、自民党内の私的な総裁選挙が、国民を巻き込んだ首相選びの選挙になるのではないか。立憲民主党以下野党は一人勝ちの安倍政権が存在するから成り立っているパラサイト野党のようなものである。そこに石破氏が党内野党として切り込めば、本物の野党も目覚めるだろう。いまこそ「政策至上主義」を生かす時だ。低所得者所得倍増計画ってな公約があれば選挙は盛り上がる。