22日、23日の両日ワシントンで開かれていた米中の事務レベルによる通商協議は表向き何の進展もなく終了した。日経新聞は「ホワイトハウスによると、(米国は)中国に対して知的財産侵害の問題への対処を求めたようだ。両国は同日、160億ドル(約1兆8千億円)分の輸入品に追加関税をかけ合うなど対立が激しくなっている。トランプ米大統領が協議を踏まえて今後の対応を決めるが、中国への強硬姿勢を和らげるかは不透明だ」と伝えている。ロイターは「米企業の知的財産権侵害や中国政府の産業への補助金という米国側の懸念に中国がまだ対処していないと指摘。米政府は中国側に引き続き問題への対処を促していく、と語った」と、トランプ政権の高官発言を伝えている。
トランプ大統領は今回の協議について当初から、「多くの進展を期待していない」(日経新聞)と語っており、米中の対立緩和につながるとの見通しはなかった。そういう面からすると今回の協議は想定の範囲内ということになる。それを見越すかのように両国は23日、追加で160億ドル相当分の輸入品に追加関税の上乗せを発動し合っている。米中の貿易摩擦は依然として収束の兆しがみえないというのが事前協議の結論のようだ。ただ、個人的には水面下で何らかの対応策が検討されていると思う。この対応策については関係者に厳しい箝口令が敷かれているはずだ。米中の貿易戦争は双方の政権が面子をかけている。ドラマチックな幕引きを図るためにも、最後の最後まで慣習をドキドキ、ハラハラさせなければならない。
日経新聞によると「トランプ政権は中国に対し、ハイテク分野に巨額の補助金を振り向ける中国の産業振興策『中国製造2025』の取り下げや知財保護の強化を求めている。中国がどこまで譲歩するかが大きな焦点となっている」とみる。これが事実なら中国政権も引くに引けないだろう。だが、これは記者の見方にすぎない。トランプ政権も中国経済の破壊を目指しているわけではない。国民に向けて説明可能でわかりやすい“譲歩”があればいい。おそらく両国の落とし所は、双方が「勝った」と宣伝できる曖昧で実態のない妥協だろう。この妥協の上で中国は「ささやかな」政策変更を行う。トランプ政権はこれで中間選挙に勝利すれば目的は達成される。妥協する時期は不明だが、おそらく2000億ドル相当の輸入品に対する関税の引き上げ時期と重なるのだろう。個人的には米中はすでに妥協に向けて動き始めていると見るが、果たしでどうか・・・。