[上海 26日 ロイター] – 中国は米中通商紛争の激化で株式や通貨が値下がりしているにもかかわらず、外国からの証券投資ラッシュが止まらない。
保護主義が台頭しても資本市場の開放が進んでいるためで、長い目で見た成長可能性は通商紛争による目先の悪影響を上回るとみた西側機関投資家は、値ごろ感からの買いを強めている。
フィデリティ・インターナショナルのディレクター、キャサリン・ユン氏は「この市場環境では『フォーリン・エンジェル(割安な銘柄)』がいくつも見つかる」と指摘。先進国市場と比べると、人民元建てA株は米中通商紛争を巡る先行き不透明さを既に相当程度織り込んだとの見方を示した。
中国株に集中的に投資するフィデリティの複数のファンドは、中国株市場が15%以上下落する中、今年入って運用資産が増加した。UBSアセット・マネジメントやJPモルガン・アセット・マネジメント、ノイバーガー・バーマンなども今年、A株買いを強化している。
UBS・ウェルス・マネジメントの中国エコノミスト、フ・ユファン氏は「中国は(米中通商紛争の)悪影響を抑えるため、今年になって資本市場の開放を加速している」と述べた。
MSCI指数による6月のA株組み入れを受けて、中国当局は株式・債券市場国際化の取り組みを強化。上海とロンドン両証券取引所の接続計画が浮上しているほか、MSCI指数におけるA株組み入れ比率が引き上げられたり、FTSEラッセルがA株を旗艦指数に組み入れる可能性もあり、中国は今後1年間で海外市場での存在感がさらに高まりそうだ。
BNPパリバの最も楽観的なシナリオでは、中国の資本市場国際化によって人民元建て資産に対して外国投資家から1兆3000億─1兆4500億ドルの需要が生まれると推計している。
国際金融協会(IIF)によると、中国株式市場には今年1─8月に海外から差し引き477億ドルの資金が流入した。
JPモルガン・アセット・マネジメントの大中華圏株式調査ヘッド、シュミン・ファン氏は「当座、中国の消費の伸びを楽観視している」と述べ、ヘルスケアや教育など株価の下落が大きいセクターに長期的な投資機会があるとの見方を示した。
「iシェアーズ・FTSE・A50・チャイナ・インデックス・FTSE」(2823.HK)や「エクストラッカーズ・ハーベスト・CSI300・ETF」(ASHR.L)といった人気の高い中国株ETFは資金流入が増えている。
中国株の外国人保有比率は過去1年間で50%近く増えたが、時価総額全体に占める比率は依然としては3%に届かない。債券の外国人保有比率も70%増えたが、時価総額比率は2%にすぎない。
IIFのデータによると、中国の資本市場は外国からの資金動向が差し引きプラスになっているのに対して、タイやロシア、韓国などの近隣市場はドル高や米株高のあおりで資金が流出している。
通商紛争が激しさを増しても、中国当局は市場開放に積極的だ。
上海証券取引所は今月、UBS・アセット・マネジメントなど20社近い海外機関投資家を招き、上海上場企業6社の幹部との会合を開いた。中国政府も資本流入規則を緩和し、海外の複数の資産運用会社に中国内での事業免許を発行した。
ソシエテ・ジェネラルのキャッシュ・株式・グローバルエグゼキューション・アジア太平洋ヘッド、ステファン・ロワゾー氏は「市場開放を続けるという非常に強いシグナルが出ている」と述べた。
(Samuel Shen記者、John Ruwitch記者)