他人事ながらというのか、他国のことながらというのか、ちょっと気になるのはトランプ大統領が最高裁判事候補に指名したブレット・カバノー氏(53歳)をめぐる一連の騒動である。同氏が最高裁判事候補に指名された途端に噴出した性的スキャンダル。ついに9月28日には上院の司法委員会で渦中のクリスティン・ブレイジー・フォード氏(51)が証言に立った。この人はカリフォルニア州のパロアルト大学で心理学を教えている教授。BBCによると同氏は「お互い10代のときにカバノー判事が自分をベッドに押さえつけて服を脱がそうとした」と訴えている。大学教授という肩書きがスキャンダルの真実性に重みをつけているようにもみえる。フォード氏の告発を機に同様のスキャンダルを訴える女性が別に2人登場している。

 

カバノー氏には飲酒疑惑も浮上している。どちらの疑惑も40年以上も前のことである。真実はなにか、個人的にはあまり関心がない。興味を惹くのは40年も前のことをめぐって共和党と民主党が真っ二つに分かれて論争していることである。それをメディアが連日重箱の隅をつつくような報道合戦を繰り広げている。米政界の対立の構図はちょっと脇におくとして、メディアのこのあり方に問題はないのか。日本のメディアと比較しながら「何処も同じメディアかな」との印象が拭えない。想像するにカバノー氏はおそらくリベラル派にとって受け入れがたい性格の持ち主なのだろう。9人いる米最高裁判事の色分けは現在保守派4人、リベラル派4人、中立は1人である。カバノー氏は中立派判事の辞任を受けて指名された。カバノー氏が承認されれば最高裁の判事は保守派が過半数を占める。

 

カバノー氏の指名承認は米国にとって大きなイベントであることは間違いない。だからといって人格攻撃が許されていいわけはない。南カリフォルニア大学(USC)の法政治学教授スーザン・エストリッチ氏はブルンバーグのインタビューで、「30年以上も前のことを問題にするのは馬鹿げている」と語っている。40年も前のことを我々はどれだけ覚えているのだろうか。個人的には飲み屋やパーティーのこと、女性との付き合いなどうっすら覚えているが詳細はほとんど記憶にない。カバノー氏を擁護するつもりはないし、フォード氏に同調するつもりもない。仮に30年以上前に過ちがあったとしても、悔い改めれば済むことである。それすら許さないとすればフォード氏はどうして30年以上もこの事実を公にしなかたのだろうか。新たな疑問も湧く。政治は戦いだから致し方ないとしても、メディアはこの闘争に巻き込まれてはいけない。日本のメディアは持って他山の石とすべきだが・・・。