連休中にポンペオ米国務長官の北朝鮮訪問が実現し、朝鮮半島非核化が前進しそうな雰囲気を感じた。ひょっとすると日朝首脳会談が実現するかもしれない、そんな期待感も頭の片隅をよぎった。明けて今朝、いつものようにネットでニュースを見ていたら、昨日までの期待感を打ち消すような暗い話がネット上に溢れかえっていた。つかの間の期待感は雲散霧消した。そして世界中に暗雲がモクモクと湧き上がってきた。何よりも米中関係の悪化だ。北朝鮮訪問の帰途、中国に立ち寄ったポンペオ長官は中国の王毅外相と会談。この会談で両外相は「辛らつな言葉のやり取りを交わし」(ブルーンバーグ)たようだ。そしてポンペオ氏は「(両国間には)根本的な意見の相違」があると表明、米中の緊張激化があらためて浮き彫りになった。

 

EUの内部ではイタリアとEUの執行部が激しく対立している。イタリアが来年度予算で財政赤字を増やそうとしているのにたいしてEUが激しく反論している。欧州委員会がイタリアのトリア財務相に宛てた書簡で来年度予算案について、財政の軌道から「大きく逸脱」していると指摘した。これを受けてイタリアのサルビーニ副首相は「ブリュッセルの塹壕(ざんごう)にこもっているユンケル氏やモスコビシ氏ら欧州の敵と、われわれは闘っている」(同)と述べ、「過去数年間の緊縮政策はイタリアの債務を増やし、イタリアを貧しくした」(同)と怒りをあらわにしている。ここにはトランプ大統領に共通した意識が見え隠れしている。民意に敏感に反応できないエスタブリッシュメントに対する反撃だ。

 

この動きはブラジルの大統領選挙にも通じるところがある。7日に実施された大統領選挙で極右のボルソナロ氏が大勝した。過半数の得票は獲得できなかったがダントツの1位で決選投票に進む。ブラジルも経済が低迷して民意が既存の政党から離反している。そこにつけ込んでボルソナ氏が得票を伸ばしている。ちなみにイタリアのサルビーニ副首相の発言は、フランスの極右政党・国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首を招いた集会でのものである。エスタブリッシュメントが既得権益の上にあぐらをかいているうちに、世界中の民意は極右に流れている。米中の貿易摩擦が激しくなるなかで中国は国内の締め付けを強化している。いずれの政権も自国第一主義だが、その間隙をついて民意が離反している。暗雲の発生源がここにあるような気がする。