目の前で起こっていることを正確に理解するのはそうた易いことではない。いろいろな見方があり、いろいろな立場がある。立場によって見解が違い、好き嫌いによっても解釈は分かれる。前々日831ドル下げたNYダウがきのう545ドル下げた。2日間の下げ幅は1376ドルに達する。この急落の意味を今朝ニュースで探してみたが、これといった答えは見つからなかった。何かの始まりのような気がするのだが、それもよく分からない。だから、とりあえずいろいろな人の声を並べてみる。まずはトランプ大統領。ブルーンバーグ(BB)によると同大統領は、株式相場の下落は「制御不能」に陥った米金融当局の責任だと非難した。これを聞いて世界中の金融エリートが大ブーイングを発した。南アフリカ準備銀行のクガニャゴ総裁は「当局は、絶え間ない政治の干渉などを受けることなく、独立して行動する自由を与えられる必要がある」とトランプ氏を非難した。
折からインドネシアのバリ島で国際通貨基金(IMF)年次総会が開かれていた。そのパネルディスカッションでのクガニャゴ総裁の発言である。IMFのラガルド専務理事も、「パウエル氏とFRB理事らは極めて真剣でしっかりした人々で、実際の情報に基づいて決定を下すことを旨とし、決定を正しく伝える決意を持っているという印象を持っている」(BB)とパウエル氏を擁護している。ムニューシン財務長官は、「米経済のファンダメンタルズは引き続き非常に強く、米株式市場がこれまでこれほど良好なパフォーマンスを見せたのはこのためだと思う」(同)と発言。「いくらか調整があったという事実は、相場がこれだけ上昇してきたことを考えると、特に驚きではない」(同)と冷静に対応している。財務長官としてはこう発言する以外にない。それが立場でもある。
ニューブリッジ・セキュリティーズのチーフマーケットストラテジスト、ドン・セルキン氏は「相場が突如として大きく低下したのは、予想より良かった30年債入札をきっかけに、シフト感が広がったからだ。資産の分散化、そして相場の急落。これは異例だ。普通の下落率ではない。加速的な下落だ。予想より好調な国債入札の後に起きたので、資産分散化のアルゴリズムが働いたのだろう」(同)と指摘する。要するにプログラムが自動的に作動して株を売って国債を買えと指示した結果だと見る。金融政策でもトランプ大統領のせいでもなく、システム売買が株価を急落させたというわけだ。とはいえ、プログラムは金融政策や経済政策を反映するように作られている。政策にほころびや破綻が見えたからすシステムが動いたのである。その逆ではない。個人的には正常化へ向かうための行き過ぎの修正と見るがどうか。いずれにしても時間が経たないと本当の原因は見えてこないだろう。