先週末、世界同時株安に歯止めがかかったかに見えたが、東京市場の株価は再び急落して始まった。それもそのはず、米金利の上昇や米中貿易摩擦の深刻化に加えて、サウジアラビアが新聞記者謀殺の疑惑に包まれている。そしてトランプ大統領はこのタイミングでマティス国防長官退任の可能性を示唆。またまた言わずもがなの大統領の“減らず口”だ。加えてEU脱退を目指す英国は水曜日に始まるEU首脳会議を前にしても依然として大筋合意が得られるかどうか、いまだにはっきりしない。ドイツではメルケル首相が地方議会選挙で大敗している。ドイツの連立政権は新たな障害にぶつかった。日本国内では先週のムニューシン米財務長官の為替条項発言が尾を引いている。週が明けて世界は改めて大混乱の予感でスタートした。

米国の同盟国であるサウジアラビアは一体どうなっているのだろう。反政府寄りのサウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・アフマド・カショギ氏がトルコにあるサウジ領事館に入ったあと姿を消した。領事館内で殺害されたとの疑惑が世界中を飛び交っている。どうしてそんな疑惑が持ち上がったのか不思議な気がしていたが、ロイターが14日に報道した記事によるとカショギ氏はアップル・ウォッチを腕に装着していた。そのボイスレコーダーに殺害の様子が録音されており、その録音が公使館の外で待機していた婚約者のアップル・ウォッチに同期されて事実が判明したのだという。まるでSF映画のような流れだ。アップル・ウォッチにそんな機能が本当にあるのだろうか、ロイターの記事には「まず無理だ」との専門家の見解が載っている。

この件についてトランプ大統領は電話でサルマーン国王の見解を正すと表明している。それが実施されたかどうかは不明だが、殺害が事実だとすれば「厳罰」を辞さないと表明した。これに反発したサウジ政府は「サウジには世界経済に影響を及ぼすだけの重大な役割がある」と強烈に反発している。政治家としての知恵に欠けるトランプ大統領の“減らず口”が事態をより深刻にしている。おまけに同大統領は先にサウジと結んだ1100億ドル規模の武器輸出契約を取り消すつもりはないと言明した。なぜなら「アメリカが手を引けば中国とロシアが奪い盗るだろう」との見通しまで語っている。サウジ疑惑が事実かどうかと言う以前に、こんな政治家同士の掛け合いをみていると、これでは世界経済が持たないという気がしてくる。一夜明けて、気がつけば世界は疑惑と疑念と疑問に満ち満ちていた。