【ニューヨーク時事】好況を謳歌(おうか)してきた米国の経済に陰りが見え始めている。金利上昇で住宅市場が失速し、中国との貿易戦争が企業業績に悪影響を及ぼしつつある。世界経済が減速に向かう中でも「独り勝ち」状態にあった米経済の強さへの確信が揺らぎ、株式市場の動揺が続く。
米主要企業の2018年7~9月期の決算発表は佳境に入ったが、株高の原動力であった業績拡大がピークを迎えたとの懸念が台頭。23日には建機大手キャタピラーと工業・事務製品大手スリーエムが慎重な通期業績見通しを示し、投資家の不安を高めた。
キャタピラーは、トランプ政権が導入した対中制裁関税により、原材料の追加コストが年間1億ドル(約112億円)を上回ると予想。スリーエムは「中国の自動車生産が減速し、10~12月期にはさまざまな影響が出てくる」(ローマン最高経営責任者)と、中国市場の需要減を警戒する。
調査会社リフィニティブによると、主要企業の7~9月期の純利益は前年同期比25%増と好調を維持する見通し。しかし、19年1~3月期には法人税減税の効果一巡もあって伸び率は8%に縮小する見込みだ。金融大手バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは「(貿易戦争で)設備投資が落ち込むリスクがある」と警告する。
7~9月期の米実質GDP(国内総生産)は、年率換算で前期比3.5%増と高成長を維持したものの、設備投資や輸出は不振だった。また、住宅ローン金利が約8年ぶりの高水準に上昇する中、9月の新築一戸建て住宅販売件数は前月比5.5%減少。「このまま住宅販売の落ち込みが続けば、3%成長の維持は難しい」(エコノミスト)と指摘されている。