• 投資事業「新たなものは真相究明後、改めて考える」
  • 国内通信事業で人員を4割削減したい、子会社上場では高配当目指す

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、サウジアラビアでのジャーナリスト殺害事件を受け、今後の事業動向に注目が集まっていた「ビジョン・ファンド」について、運営を続けていく考えを示した。

孫社長は5日の決算会見で、「サウジの国民の皆さまから投資に関わる資金をお預かりしている。この資金はサウジの国民の皆様にとって大切な今後の経済の多様化、オイルのみに頼ることのない経済の多様化、そういう責務を負った資金」と述べた。一方、事件については「決してあってはならない悲惨な事件」と強い遺憾の意を表明し、「究明、説明を求めたい」と発言した。

孫社長、Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

サウジのファンドなどが出資する10兆円規模の投資事業は、ソフトバンクGにとって国内通信事業に並ぶ中核業務の一つ。サウジ出身のジャーナリストがトルコのサウジ総領事館で殺害された事件を受け、投資事業の行方に関心が高まっていた。

ビジョン・ファンドは、サウジの政府系ファンドから450億ドル(約5兆円)の出資を受けており、同国のムハンマド皇太子は10月のブルームバーグのインタビューで、孫氏が構想する第2のビジョン・ファンドにも新たに450億ドルを出資する方針を明らかにしていた。事件の影響から、孫氏はサウジで同月開かれた投資会議への参加を見送った経緯がある。

IPO控えた国内通信事業

また、孫社長は国内通信事業について今後2、3年で「人員を4割削減したい」とした上で、「新規事業に配置転換したい」と表明。12月に通信子会社の株式上場を控える中、国内事業の増収増益を目指していく考えを示した。国内携帯電話事業を巡っては、菅義偉官房長官の発言などから携帯通信料金の値下げ圧力が増している。

競争激化で今後端末の売り上げ絶対額が減る可能性に言及しつつ、「利益はコストダウンを含めてしっかり出すようにしていきたい」と説明。配当政策では「高配当を打ち出していきたい」との意欲を示した。

7-9月期決算概要

  • 営業利益7057億円、市場予想3729億円
  • ビジョン・ファンドとデルタ・ファンドの営業利益3925億円
  • 両ファンド以外の営業利益3132億円
  • 純利益5264億円、市場予想2163億円
  • 売上高2兆3811億円、市場予想2兆2822億円

5日開示の資料によると、第2四半期(7ー9月)の営業利益は7057億円と「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」など投資事業の伸びを受け、前年同期から78%増えた。ビジョン・ファンドとデルタ・ファンドからの利益分は全体の過半に達した。純利益段階では、アリババ株式などデリバティブ関連損益が前年同期の大幅な赤字から黒字に転換した効果も大きい。

BNPパリバ証券の中空麻奈チーフクレジットアナリストは、「決算の数字自体はものすごい。半分はビジョン・ファンドからという決算で、想像していた世界」と指摘。逆に言えば、評価益が出るということは評価損になることもあり得るため、今後のソフトバンクGにとって「そういうリスクを排除できないことが大きなリスク」とも話した。

孫社長によると、ビジョン・ファンドは現在、準備中も含め67社に投資している。同ファンドでは「やみくもに投資するのではなく、一つのテーマに向かって投資する。AI(人工知能)で群戦略を展開したい」と同社長は述べた。

セグメント別利益

  • 国内通信事業2252億円、前年同期は2204億円
  • スプリント事業952億円、前年同期は702億円
  • ヤフー事業390億円、前年同期は403億円
  • アーム事業40億円の赤字、前年同期は79億円の赤字