きょう(13日)は、EUがイタリア政府に求めている来年度予算案の再提出期限。EUはGDP比で2.4%の赤字を盛り込んだイタリアの来年度予算案が、健全財政化を目指した財務規律ルールに違反しているとして再提出を求めている。これに対してイタリアのトリア経済財務相は、「経済が低迷する中、見直しは自殺行為になる」(NHK)などと反発し、再提出要求には応じない姿勢を示している。イギリスの離脱交渉は最終局面を迎えているが見通しは依然として不透明。マクロン仏大統領とメルケル独首相は11日、第1次世界大戦終結100周年セレモニーの機会をとらえて会談、「多国間主義堅持」で合意しているが、イタリアの反乱は多国間主義がいかに前途多難かを示している。
イタリアがEUの要求を拒否した場合に何が起こるのか、よく分からない。イタリアが脱EUを目指すか、EUが時間をかけてイタリアを説得するのか、選択肢はそれほど多くないような気がする。EUはルール違反が明確になればイタリアに罰金を科す仕組みになっている。そうなれば経済が低迷する中で、窮余の策として財政赤字の拡大に踏み切るイタリアの財政赤字はさらに拡大する。ドタ感だが両者の優秀なテクノクラートが雁首を揃えて協議し、予算案は変更せず財政赤字比率を低く抑える目くらましのような対策を考え出すのではないか。例えば、インフレ率を高めに設定してイタリアのGDPをかさ上げするとか・・・。そんなことをしてもイタリア経済の低迷が消えるわけではないが、両者のメンツはなんとか保たれる。
2016年に実施された英国の国民投票や米国の大統領選挙によって、一国主義が世界の最前線に躍り出た感がある。とりわけトランブ大統領による「米国第一主義」は世界中に自国最優先ムードを拡散した。どの国も本質的には自国利益を最優先に考えているが、トランプ大統領はそれを政策として露骨に表明することに一種の“正当性”のようなものを付与した。多くの国はこれまで自国優先と心の中で思っても、公の場で口に出すことを躊躇してきた。多国間主義が世界を平和に導くとする理念が、本音の議論にブレーキをかけてきたのである。トランプ大統領はその壁を取り除いた。そして自国第一主義が世界中で一気に芽を出してきた。メルケル首相もマクロン大統領も、国内的には自国第一主義の勢力に足を引っ張られている。マクロン大統領は記念式典で「古い悪魔が再度目覚めつつある」と警告したが、世界の潮流はこの警告を無視しそうな雰囲気だ。
- 投稿タグ
- EU