[東京 12日 ロイター] – 自民党の阿達雅志参院議員(国土交通大臣政務官)は12日、プレミアム・ニュースセミナー(リフィニティブ主催)に参加し、米国は水面下で日本に対して自動車の対米輸出削減と現地生産拡大を求めてきており、年明けに始まる日米通商交渉でも議論は不可避との見解を示した。

また、12月にも米側は対日通商要求の詳細を公表するとの見通しを提示。米国側からは、174万台の対米自動車輸出のうち最大100万台もの輸出削減を望む声もあったとし、交渉は厳しいものになるとの見通しを表明した。

阿達氏は大手総合商社出身で弁護士資格を持つ米国通として、今後の日米交渉の展望を語った。「今回の中間選挙では、2016年の大統領選でトランプ氏が強かった州のいくつかを共和党が取りこぼしたため、トランプ大統領は次期大統領選での再選を目指し、米国の製造業の復活を強引に進め、貿易問題でより強硬な発言をする」と語った。

すでに米国は対メキシコ、カナダではNAFTA新協定(米国・メキシコ・カナダ協定=USMCA)合意で米国の自動車輸入削減に向けて実績をあげており、対日本では「年間7兆円の対日貿易赤字のうち4兆円を占めるのが、日本から米国への年174万台の自動車の輸出。これを何とか減らせという話になると思う」と明言した。

今年9月の日米首脳会談で、日米物品貿易協定(TAG)の交渉入りが決まる以前には「物品についての貿易赤字を減らしたい。その焦点は農業でなく自動車だと米国側は明言していた」という。このため「現在、日本は自動車に対する25%の追加関税を免れているものの、関税が嫌なら輸出を減らし、米国現地生産を増やせと、(日本側は)事務レベルでは相当な要求を受けている。この部分(の議論)は避けて通れない」と分析した。

このため仮に自動車輸出を25万台程度日本が削減しても「貿易赤字の削減額は、数千億円程度。日本が防衛装備品や液化天然ガス(LNG)などで米国からの輸入を拡大しても、貿易赤字の削減幅は1兆円程度。これはトランプ大統領が期待する数字とはまったく違う」と指摘した。

<自動車輸出減より円高が日本経済に影響大>

金融市場では、日米交渉の為替への影響が懸念されているが「トランプ大統領は為替にあまりこだわっていない印象」と指摘。「実質実効レートで今は超円安で、米国が日本の金融政策にもっと厳しい意見をぶつけてもおかしくないが、日本の円安がけしからんとは言ってこない」とした。もっとも「対米自動車輸出の大幅削減と為替円高では、円高のほうが日本経済への影響は大きい」とも付け加えた。

世界経済の不安定要因である米中対立については「米中の問題は、根本的に相当長期化すると思うべき」と警告。「中国が(重要技術の国産化を進める)中国製造2025など現在展開している政策を簡単に否定するとは思えず、米中関係は一時的に貿易赤字削減などで合意できても、(その合意は)長続きしないだろう」との見通しを示した。