ただ、西川氏自身、ゴーン容疑者に引き立てられて社長まで上り詰めた経緯がある。社長就任前には一時、ゴーン容疑者と日産の共同最高経営責任者(CEO)を務めるなど、二人三脚で経営に携わってきた。それだけに、西川氏がゴーン容疑者の行動を厳しくチェックできたかは疑問だ。約20年もトップを務め、経営破綻寸前の日産を救った立役者であるゴーン容疑者。西川氏は「一人に権力が集中していた。長年にわたるゴーン統治の負の側面(が出た)」と説明し、ゴーン容疑者を絶対視するあまり、ガバナンスが機能しなくなっていたことを事実上、認めた。
事件の影響はあまりに大きく、衝撃は多方面に広がっている。平成11年に日産の最高執行責任者(COO)に就いたゴーン容疑者の言葉で知られているのが「コミットメント(必達目標)」だ。経営再建計画で1兆円のコスト削減、本業でもうける力を示す営業利益率(売上高に占める営業利益の割合)4・5%の達成などの数値目標を掲げ、「達成できなければ辞める」と強い覚悟を表明。これらの目標をクリアしたことで「V字回復」という言葉にも注目が集まった。
こうしたゴーン流の再生手法は、産業界や自治体にも広く採用された。報道で事件を知った自動車メーカーの関係者は、「個人的なしがらみにとらわれず、従業員を巻き込んで目標達成へと突き進むゴーン容疑者の功績は大きい」と“アウトサイダー”としての力量を高く評価した。メーカー各社からは「信頼していただけにショックが大きい」と戸惑う声も聞かれた。
ゴーン容疑者の決断で日産の傘下に入った三菱自動車は、業績が回復してきた出ばなをくじかれた格好だ。
完成検査をめぐって、昨秋以降に日産やSUBARU(スバル)などで相次ぎ不正行為が発覚した。今回の事態で自動車業界への信頼感がさらに揺らぎかねない。
コメント