日産自動車グローバル本社=横浜市西区で2018年11月20日、本社ヘリから渡部直樹撮影

 日産自動車代表取締役会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)ら2人が金融商品取引法違反の疑いで逮捕された事件で、他の取締役の報酬の一部がゴーン会長に流れていた疑いがあることが関係者への取材で明らかになった。ゴーン会長には、取締役への報酬総額を配分する権限があったといい、東京地検特捜部がゴーン会長を巡る会社資金の流れを追っている模様だ。

 関係者によると、日産は2010年以降、株主総会で取締役の報酬総額は毎年約30億円で承認されていたという。だが、実際に取締役に支払われた報酬の総額は承認額より毎年約10億円少なかったという。有価証券報告書で開示が義務づけられているのは年間1億円以上の役員であるため、ゴーン会長以外の大半の役員報酬は外部からは分からない。

 また、ゴーン会長が母国のブラジル、オランダ、フランス、レバノンで日産側に邸宅を提供させていたとみられることも関係者の話で判明。邸宅は海外の関連会社に購入させていたのに、ゴーン会長は一部の家賃を支払っていなかった疑いがあるという。このため、役員が任務に背いて会社に損害を与えた場合に適用される特別背任罪に当たる可能性もあるという。ただ、同罪は自身が利益を得る目的があったことを立証する必要があり、立件のハードルは高いとみられる。

 ゴーン会長は海外で生活する時間が多いが、2人が逮捕された19日夜に記者会見した日産の西川広人代表取締役社長は「(所得税は)日本で納税していたと思っている」と話している。逮捕容疑は、代表取締役のグレッグ・ケリー容疑者(62)と共謀し10年度から5年間のゴーン会長の報酬総額が約99億9800万円だったのに計約49億8700万円と偽って有価証券報告書に記載したとされるが、税務申告が適正だったのかも捜査の焦点となる。

 特捜部は今回の捜査で、今年6月に運用が始まった「司法取引」を適用し、虚偽記載に関与したとみられる日産関係者の協力を得て不正の実態解明を進めている模様だ。同制度の適用例は今回が2例目。初適用となった三菱日立パワーシステムズを巡る外国公務員贈賄事件では、法人の起訴を見送る代わりに元役員ら3人を在宅起訴している。【巽賢司、遠山和宏、金寿英】

株価連動報酬も不記載か

 ゴーン会長が株価に連動した報酬数十億円を受け取る権利を与えられていたのに、有価証券報告書に記載していなかったとみられることも、関係者への取材で明らかになった。逮捕容疑となった不記載の報酬に含まれるとみられる。

 関係者によると、この権利は「ストック・アプリシエーション権(SAR)」と呼ばれ、日産は2003年の株主総会で受領権の導入を決定したという。SARでは権利付与時に決められる基準株価からの上昇分が現金で支払われる。ゴーン会長は11年3月期以降、SARを得ていたが、有価証券報告書に記載していなかったという。

 他の取締役はSARの金額を記載。ゴーン会長だけが意図的に記載を拒んだ可能性があるとみられる。