燃料税の増税に反対して始まったフランスのデモは先週、最大規模の抗議行動に発展した。AFP通信によれば、全土で約3万1000人が参加し、パリで650人以上、仏全体では950人以上が拘束された。治安当局が全土で警官ら約9万人を動員して厳戒態勢を敷く中、シャンゼリゼ通りなどパリ中心部でデモ隊と治安部隊が衝突し、当局側は催涙弾と放水車で対応。仏メディアは、パリで30人以上が負傷したと報じた。まさに“パリ燃ゆ”である。発端は燃料税の増税だが、裏にはマクロン大統領に対する不満があるようだ。ネット上では①年金受給年齢引き上げ②雇用規制の緩和③各種公共施設の民営化④徴兵制の復活などを指摘する声がある。フランス再生を目指す改革派大統領の“挫折”というべきか。
マクロン氏はフランス政治の停滞を打破するとして、左右どちらにも与しない第三の道を追求する方針を掲げて大統領に当選した。既存秩序を打破する新しい流れを作り出そうとしたのである。そのために打ち出した政策は労働組合を敵視するような労働規制の緩和、財政健全化に向けた年金受給年齢の引き上げ、国民に短期間の徴兵制を義務付けるなど意識改革を目指したものものなど、どちらかといえば右寄りの政策が多く含まれていた。こうした改革はこれまで世界の潮流だった新市場主義に近いと言っていいだろう。どちらかといえば金持ちにより恩恵がある改革になっていた。おそらくこうした改革はトランプ大統領の米国や安倍政権の掲げる各種の政策と親和性がある政策だった。その政策に対して労働者がノーを突きつけたのである。
日本では安倍首相が保守層を代表してここ数年、新市場主義をベースにした各種の改革を推進してきた。来年に予定される消費税率の10%への引き上げもこの路線の延長線上にあるとみていいだろう。古くは自民党、公明党、民主党の3党合意に端を発している消費税の増税は、サッチャー英首相が唱えた財政再建と市場ベースの経済再建を両立させるための手段だった。その増税にフランス国民は満を持して反対を突きつけたのである。モリカケ問題を持ち出すまでもなく国民の間に不満が鬱積する安倍政権、来年10月の10%への消費税率引き上げは本当に実現するのだろうか。フランスのデモを見ながら日本の増税路線の先行きが気になり始めた。