[ジュネーブ 17日 ロイター] – 世界貿易機関(WTO)が17日に行った米国の通商政策に対する審査で、中国と欧州連合(EU)が保護主義的な政策を鋭く非難すると同時に、日本、スイス、カナダからも批判の声が上がった。これに対し米国は中国の「不公正な競争政策」を指摘するなど、冒頭から白熱した意見のやりとりが繰り広げられた。
米通商政策の審査は2年に1度実施される。ロイターが入手した文書によると、米国のシア世界貿易機関(WTO)大使は中国の「不公平な競争の慣行」は外国企業や労働者に悪影響を与えWTOルールに違反していると指摘する一方で、米国は改革の取り組みを先導すると表明した。
これに対し、中国の張向晨WTO大使は、トランプ政権の鉄鋼、アルミ製品への関税は、国家の安全保障上の懸念を口実にした保護主義だと指摘した。
また、シア大使はWTOの紛争解決制度が加盟国が合意した制度とかけ離れていることに強い懸念を示し、WTOの上級委員会がいくつかの法的解釈を逸脱していると指摘。これに対し張大使は、米国が判事に相当する上級委員の選任を阻止したことが、WTOの機能不全を引き起こしたと指摘した。
シア大使は米国は関税が極めて低く、世界でも最も開かれた競争力の高い国の一つであると主張。トランプ政権は、競争原理の働く市場、自由で公平かつ互恵的な貿易にコミットしているとし、単独行動主義で保護主義との批判を否定した。
中国については、自国の産業を支援すると同時に外国企業およびその商品やサービスを規制ないし差別するために「非市場的な産業政策、その他不公平な競争慣行」を実施したと指摘。「WTOは、経済や貿易で国家主導の重商主義的アプローチを続けている中国がもたらすファンダメンタルな試練に対処する体制になっていない」と述べた。
米中貿易摩擦の一因となっている鉄鋼や自動車への輸入関税問題には言及しなかったが、中国の技術移転や知的財産権に関する慣行を差別的と結論付けた通商301条に基づく調査を擁護。「米国は、WTOの機能を巡る懸念に対処する意向を共有する加盟国との協力にコミットしている。WTOの存続には改革が必要」と述べた。
張大使もシア大使に同調したが、「この建物の屋根が雨漏りしているなら、壊してわれわれ全員を雨ざらしにするのでなく、協力して修復すべきだ」と指摘。米通商301条については、「数10年間休眠していた一国主義の亡霊を呼び覚ました」として非難した。
このほか、EUのファンヒューケレン大使とカナダのデブール大使は「バイ・アメリカン」条項により米国の調達市場が制限されているなどと指摘。ファンヒューケレン大使はWTOは深刻な危機状態にあり、米国が震源となっていると批判した。WTO
当局者によると、日本とスイスも鉄鋼とアルミニウムに対する関税措置の正当化に国家安全保障が利用されていることに懸念を示した。