[アトランタ 4日 ロイター] – パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は4日、FRBは忍耐強く臨むとともに、経済の勢いが堅調であっても市場が織り込む下振れリスクに対して敏感であるとの認識を示した。また将来の利上げやバランスシート縮小を巡って柔軟に対応すると明言。世界経済の減速から貿易戦争に至るまであらゆるリスクを考慮しつつ、好調な経済統計との均衡を図る考えを明らかにした。 

パウエル氏はイエレン、バーナンキ両元議長との討論会で「とりわけインフレ指標がこれまで落ち着いている中で、われわれは経済動向を注視しつつ、忍耐強く当たる」とした上で、利上げは既定路線ではないと強調。必要に応じて「常に政策スタンスを大幅に変更する用意がある」と述べ、2016年当時と同様、金融引き締めの停止もあり得るとの考えを示唆した。 

またこうした「柔軟性」はバランスシートの縮小にも該当すると明言。FRBが保有する債券の安定した圧縮が市場に甚大な影響を与えるとは考えにくいものの、それが最大雇用と物価安定を巡るFRBの二重責務遂行に支障をきたすようであれば方針を変更すると表明した。議長は先月、バランスシート縮小は「自動操縦」と述べ、市場で物議を醸したが、今回の発言は「特に趣旨が変わったわけではなく、議長なりに根気よく細部にわたり丁寧に説明したもの」(DRWトレーディング)とみられる。 

さらに議長は「市場は下振れリスクを織り込みつつあるが、けさ発表された雇用統計を見れば市場がかなり先読みしていることは明白だ」と指摘し、「われわれは市場のメッセージに注意深く敏感に耳を傾け、政策運営に当たり下振れリスクを考慮するということを申し上げたい」と語った。 

昨年12月の雇用統計は、非農業部門の雇用者数が31万2000人増と10カ月ぶりの大幅な伸びを記録した。時間当たり賃金も前月比0.4%増と、前月の0.2%増から伸びが加速。労働参加率は17年9月以来の水準に上昇した。パウエル氏は雇用統計を「非常に強い」とし、統計は新年にかけ十分な勢いを保っているようだとした。 

金利先物はこの日、今年1回の利上げ確率を小幅ながら織り込む動きとなった。議長発言前はまったく織り込んでいなかった。 

パウエル氏は自身の仕事ぶりについて、政府と直接やり取りしたことはないが、仮にトランプ大統領から辞任を求められても辞めるつもりはないと明言。トランプ氏と会談する予定はないとした。 

塩田注
12月の雇用統計は米国経済が順調に回復していることを印象付けた。米国経済の先行きをめぐっては市場とパウエル議長との間に認識のギャップがあったが、今回の雇用統計は議長の方が先見の明があることを立証したと言えるのではないか。トランプ大統領は市場はであり、トランプ対パウエルの戦いも議長の勝利とみていいだろう。