ショイグ露国防相(右)に対し、新型兵器の開発・配備などの方針を指示するプーチン大統領=モスクワで2日、AP

 【モスクワ大前仁】ロシアは米国と結んできた中距離核戦力(INF)全廃条約の履行停止を表明したことに伴い、新たな大陸間弾道ミサイルなど新型兵器の開発や配備に力を入れていく方針を示した。INF条約で禁止されてきた中距離ミサイルについても、公に開発・配備を目指す考えを表明し、米国への対抗姿勢を鮮明にしている。

 プーチン露大統領は2日、INF条約の履行停止を表明した際、▽極超音速(ハイパーソニック)のミサイル兵器「アバンガルド」▽戦闘機搭載型の超音速ミサイル「キンジャール」▽レーザー兵器「ペレスベット」▽大陸間弾道ミサイル「サルマト」▽原子力魚雷「ポセイドン」――という個別の新型兵器に言及。同席したショイグ国防相に対し、米国が一方的にINF条約を離脱したことへの対抗策として、開発や配備に取り組むよう指示した。

 これらの兵器はプーチン氏が昨年3月の年次教書演説で紹介した新型兵器だ。

 アバンガルドは昨年12月、音速の27倍(マッハ27)で飛行し約6000キロ離れた標的に命中させる実験に成功。プーチン氏が「いかなるミサイル防衛(MD)システムでも対処できない」と豪語した兵器で、今年配備を行う。キンジャールは昨年7月、露国防省が発射実験に成功した映像を公開。マッハ10で飛行し射程は2000キロという。プーチン氏はアバンガルドやキンジャール以外の兵器についても開発・配備を促した。

 プーチン氏はさらに「幾つかの国が宇宙空間に兵器を配備する計画を練っているが、(我々が)いかにして、そのような脅威を取り除くのかを知りたい」とショイグ氏に問いかけることで、米国が検討する宇宙空間での兵器配備に対抗していく姿勢も示唆した。

 米国はロシア軍がINF条約に違反する射程が500キロ以上の地上発射型巡航ミサイル「9M729」を配備していると批判してきた。これに対しロシアはこれまで、条約に違反していないと反論してきたが、露外務省は2日声明で「米国がもたらした脅威に対し、鏡のように対抗する権利を有する」と主張。中距離ミサイルの開発、製造、配備を進めていく方針を示した。

 一方で声明は、米国が地上発射型の中距離ミサイルを配備しないうちは、ロシアが先には同ミサイルを配備しない方針だと明示。さらに「もしワシントン(米国)が破壊的な方針を見直し、INF条約の履行に戻るのならば、我々は対話を閉ざさない」とも述べ、米国が建設的な姿勢を示せば、2021年に期限を迎える「新戦略兵器削減条約」(新START)の延長交渉にも応じていく立場にも触れている。