[ブリュッセル/ロンドン 6日 ロイター] – 欧州連合(EU)のトゥスク大統領は6日、英国のEU離脱(ブレグジット)を撤回できるとの考えは捨て去ったとし、現在の優先事項は合意なき離脱となった場合の「失策」を回避することだと述べた。 

トゥスク氏はブリュッセルでアイルランドのバラッカー首相と共同会見を開いた。アイルランドは北アイルランドとの国境を巡る混乱を避けるために、英国に法的な保証を要請。 トゥスク氏はアイルランドの主張に対しEU加盟国として賛同する意向を示した。 

メイ英首相は7日、ブリュッセルでEU側と会談する予定。議会が可決した離脱協定案の修正を求める構えだが、トゥスク氏とバラッカー首相はEU加盟国首脳と同様、国境の安全策(バックストップ)を含む協定案の修正には応じない考えをあらためて示した。 

EUのユンケル欧州委員長は、7日にメイ首相がブリュッセルを訪れた際に、離脱協定案は再交渉できないと伝えると表明した。 

共同会見で「英EU離脱はアイルランドと英国の問題でない」「欧州の問題で、離脱協定案の再検討が可能との考えは受け入れられない」と述べた。メイ首相もEUの立場を認識しているとした。 

トゥスク氏は、メイ首相から打開策について現実的な提案を期待しているとし、「共通の解決策が可能だと強く信じている」と述べた。 メイ首相の報道官は、EUが合意を伴う英離脱を望むのなら、協定案に変更が必要となるとの認識を示した。 

トゥスク氏は、EUとして英国に新たな提案はしないと述べ、合意なき離脱を推進するグループには「地獄の特別な場所」がふさわしいと語気を強めた。 

バラッカー首相は、打開策が見出せると確信しているとしつつ、合意なき英離脱への備えも整えていると説明。メイ首相が8日、ダブリン入りすると明らかにした。 

トゥスク氏の発言を受け、英国内の離脱推進派は反発。離脱運動を先導したナイジェル・ファラージ氏は「離脱後はあなたのような選挙で選ばれていない傲慢ないじめっ子から自由になれる。天国のような話だ」と語った。 

アイルランドのナショナリスト勢力は、合意なき英離脱となればアイルランドの統合を巡り住民投票が必要になるとメイ首相をけん制。シン・フェイン党のマクドナルド党首は、メイ首相が民主主義者として、北アイルランド紛争を終結させるため1998年に結ばれたベルファスト合意(グッドフライデー合意)に戻る必要があると指摘した。 

EU当局者らはメイ首相に、野党・労働党の恒久的な関税同盟加盟案を受け入れるよう求めている。 実現すれば安全策の必要がなくなり、英議会の承認が得られる可能性があるとの見方も出ている。 

ただメイ首相のブリュッセル入りを控え、当局者らの期待は高くない。EU幹部外交筋の1人は「メイ首相は合意を実行に移していない」とし、「メイ氏が超党派合意を形成できない状況は信じ難いほどだ」と話す。