ソフトバンクグループ(SG)の孫正義社長がまたまたサプライズを起こした。自社株買いを実施して、買い入れた株式は消却するという。サプライズはその規模だ。6000億円を上限に7日から2020年1月31日まで続けるという。取得資金は通信子会社ソフトバンク上場による手取資金約2兆円の一部を使う。これによって企業価値は大きく上昇する。要するに株価が上がるというわけだ。ブルームバーグ(BB)によると孫正義社長は6日の記者会見で、負債を除くSGの保有株式価値が21兆円になっているのに対し、現在の時価総額は9兆円で、「私は安過ぎると思う」と発言している。企業価値を適正にするために自社株買いをするとうわけだが、この対策に果たして妥当性はあるのだろうか。

21兆円の価値を持っている会社の株価が9兆円というのは確かにおかしい。SGの株価はもっと高くても良さそうな気がする。だが株価というのは保有株の価値だけでは判断できない。財務体質やその企業の将来性、孫氏という稀有で異能な経営者の存在感など、あらゆる要素を総合的に勘案して形成されている。早い話、孫氏が明日事故でなくなればSGの株価は急落するだろう。保有株式の価値がどんなに多くても「孫氏のいないSGにどれくらいの価値があるか」、誰も想定できない。リスクが大きいことは現在価値が必要以上に小さくなる要因でもある。6日に自社株買いを発表した後同社の株価は上昇した。そういう面でかなりの効果はあった。だが、21兆円の価値に比べれば依然としてはるかに小さい。

日本企業の株価はこのところ米国に比べると相対的に低い。孫氏の悩みはSGに止まらず日本株全体に言えそうだ。どうしてこういうことになるのかわからない。専門家に解明してもらいたいものだ。SGの株価は今回の対策によって上昇するはずだ。6000億円分の株式が市場で買い入れられ、それが消却される。発行済株数が少なくなるのだから、その分株価は理論的には上昇する。だがそれはあくまでも理論値である。株式の現在価格はその企業の将来性を先取りしたものである。将来性が大きいとなれば理論値に関係なく株価は上がる。将来性が小さければ現在の業績がどんなに良くても株価は上がらない。SGに限らず相対的に割安感のある日本の株価は、日本経済の将来性が小さいことの繁栄である。コツコツと内部留保を積み増すだけの経営者に比べれば、SGの将来性は高いとみられている。それでもSGの株価は相対的に割安だ。問題はこの辺に隠されている気がする。