米中の貿易摩擦は先週トランプ大統領が「首脳会談は当面ない」と表明、行き詰まり状態に陥っているとの観測が広がった。今週にはいって昨日から北京で次官級協議が始まっている。14日からは閣僚級協議も行われる。2月末の最終期限を約3週間後に控え、最後の山場に差し掛かった。情勢は混沌としている。メディアによって、発言する人によって見通しは分かれている。そんな中できのう、コンウェイ米大統領顧問は「トランプ大統領が中国の習近平国家主席と近い将来に会談する可能性はなお存在している」と述べて注目を集めた。単なる希望的観測かもしれない。為替市場は合意を先取りしてドルが年初来高値を更新した。実態はよくわからない。
米中交渉をにらみながら周辺では色々なことが起こっている。NHKによるとアメリカ軍は11日、中国が主権を主張する南シナ海の海域で艦艇を航行させる「航行の自由」作戦を実施した。当然のことながら中国はこれに猛烈に反発している。外務省の華春瑩報道官は「現場では、中国海軍がアメリカ軍側に、『許可なく侵入した』として警告を行ったと」している。その一方で、「貿易問題の解決は両国だけでなく世界経済にとっても有益だ」とも述べている。米国による軍事的な圧力は貿易交渉に対する支援行動なのだろうか。そうだとすれば「中国としては、貿易と軍事の両面で圧力を受けていらだちを強めている」とのNHKの解説も頷ける。
気になる情報もある。ブルームバーグによると「中国では今月、大型の支払い遅延が2件起きた。債務不履行(デフォルト)に陥る企業が記録的水準に増える中、信用市場で山積しつつあるリスクが浮き彫りになっている」という。中国経済が深刻化していると多くの識者が警告している。中国としては何としても今月中に米中の首脳会談を開きたいところだろう。冒頭のコンウェイ米大統領顧問の発言は、中国に対してもう一段の譲歩を求めたものかもしれない。国際政治の舞台裏は複雑である。高官の発言が何を意味しているのか、本当の狙いを読み解くことは一般の市民には難しい。メディアに頼るしか方法がないのだが、そのメディアも真実に近づけていないような気がする。何れにしてもこの1〜2週間が国際的に政治にとっても、経済にとって一つの山場になるだろう。