4月に開催が予定されている「一帯一路」の国際フォーラムに日本は、世耕経産大臣を派遣する方向で検討を進めているようだ。フジテレビが伝えている。【独自】とついているから同局のスクープなのだろう。これに対して当の大臣はツイッターで「招待状が来ていることは事実ですが、現時点では、私がフォーラムに出席する方向で調整しているという事実はありません」と否定している。同フォーラムの開催は今回が2回目。前回(2017年)は副大臣を派遣している。要するに今回は派遣する人のランクを上げるということだ。今年は大阪でG20の首脳会議がある。「習近平国家主席の年内の来日に向けて、日本政府が日中関係を重視する姿勢を鮮明にする狙いがあるとみられる」とフジテレビは解説している。

日中関係が好転している折でもあり、G20の首脳会議を考えればあり得る話のようにみえる。4月ということでまだ先のことだが、大臣が明確に否定している点がちょっと気になる。この件についてはネット上では大臣を派遣することに批判的な意見が多いようだ。だから否定している訳ではないだろうが、この時点であえて「事実はありません」と強く否定した意味がよくわからない。もちろん、スクープされたから単純に否定しているということも考えられる。その場合は大臣がわざわざやらなくても、広報が「否定」すればすむ。大臣がわざわざ自分のツイッターで囁いた理由は何だ?まさか単純に大臣が広報の仕事を代弁したということはないだろう。この時点で否定することに、何らかの政治的な意図が込められていると考えるのが普通だ。

「一帯一路」は「製造業2015」と並んで中国の覇権奪取に向けた戦略である。北京ではいま貿易摩擦を巡って米中の閣僚協議が開かれている。この協議の背景にあるのは、将来の覇権をめぐる米中の確執だろう。経産大臣が「一帯一路」のフォーラムに参加すれば、トランプ大統領の機嫌を損ねることになりかねない。半面、参加しないと明言すれば好転しつつある日中関係に水を差すことになる。だから貿易協議が続いている間は自身の出席をあいまいにしておきたい。そう考えると「紹介状はきている」が、「現時点では、調整しているという事実はありません」という言い回しが妙に納得できる。米中双方の顔色を伺いながら、タイミングを見計らってどこかで決断をする。これは広報の仕事ではない。明らかに政治家の仕事である。そこまで考えて、フジテレビのスクープの意味がわかった気がした。