ホンダが2021年に英国の工場を閉鎖すると昨日発表した。これを受けて英国に衝撃が走っていると今日のメディアは伝えている。いかにもありそうな話だ。だが、そんなことで動揺する離脱強硬派って、一体どんな人たちなのだろうと逆に疑問に思う。離脱派はそんなことは先刻承知のはずだ。知らなかったとすればあまりにも常識がなさすぎる。知っていてなおかつ離脱を強行しようとしているのではないか。大英帝国の幻影を追い求めている離脱派には、目先の経済的“損得”よりも国家としての独立性、ブリュッセルの官僚に跪く屈辱感からの解放、移民や難民の受け入れ拒否など離脱の“大義”はいろいろある。だから、それでも離脱は強行されるのだろう。
経済的利害を勘案すれば離脱が無謀な歴史への逆光であることは、協議を始める前から分かりきっていた。ホンダや日産を見るまでもなく英国最大の自動車メーカーであるジャガー・ランドローバーはすでに4500人の人員削減計画を決めている。NHKによるとBMWがEU離脱による混乱を避けるため、離脱直後のおよそ1か月、乗用車の生産を取りやめる措置を決めたほか、エンジンを生産するフォードは離脱の行方によってはイギリスでの生産を見直さざるをえないという考えを明らかにしている。こうした動きは自動車業界に限らない。家電業界やIT業界、電子部品業界など様々な業界に波及するだろう。合意なき離脱となれば経済的損失は計り知れないほど大きくなる。
それでも英国はEUからの離脱を推進する。強硬派、穏健派、合意なき離脱を拒否するに人々にしても離脱の推進派であることに変わりはない。離脱そのものに反対する女性の大学教授が全裸で離脱反対を訴えたことがつい最近ニュースになった。そこまでしても離脱拒否派は離脱派を押し返えせないだろう。合意のあるなしにかかわらず世界中のメーカーがすでに英国での生産に見切りをつけ始めている。離脱の形式はどうであれ、個人的には英国がEUを離脱して再び国家として輝きを取り戻すためには相当の時間がかかると思う。それでも離脱派は“大義”に殉じるだろ。“大義”と“損得”、二つの矛盾する要求を前に混迷の度を増す英国。政治もメディアも有権者もかつてない危機を前に為す術もなく、ただただ傍観しているように見える。