先週行われた日中の貿易交渉、メディアの情報を勘案すると合意に向けて協議は順調に進んでいるように見える。金融市場は先週、合意を前提に動いていた。トランプ大統領は今朝、貿易交渉の期限を1カ月ほど延長するとツイッターに書き込んだ。3月中には米中の首脳会談が実現し、懸案となっていた為替条項も含め両国は合意する。世界中が歓迎するだろう。そんな楽観論が支配的となる中で、今朝、意外なニュースが目に飛び込んできた。ブルームバーグ(BB)によると、トランプ米大統領とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が記者団を前に喧嘩を始めたというのだ。これは一大事だ。米中の貿易交渉も決裂かと思いきや、トランプ大統領が公衆の面前で恥を書かされて怒り心頭に発したようだ。やれやれである。
BBによると真相は、「米中の合意は覚書の形になるとのライトハイザー氏の説明に、トランプ氏が『覚書は好きではない。何も意味しないからだ』と批判したことから始まった。ライトハイザー氏は覚書は法的拘束力があると反論し、トランプ氏の逆鱗に触れた」という。合意そのものの問題ではなく、合意事項をどのような形式で文書化するか、その方法論をめぐる行き違いのようだ。記者団を前にトランプ氏が不満をぶちまけたということだろうが、米交渉団のお粗末ぶりを露呈しているともいえる。BBは「事情に詳しい関係者2人によれば、大統領はライトハイザー氏から(中略)恥をかかされたと、後に周囲に不満を漏らした。トランプ氏はまた、中国との合意成立が一段と重要になっているとみており、ライトハイザー氏がまだ成立させていないことにいら立ちを示したという」。
要するにトランプ大統領は交渉をタイムリーにまとめられないライトハイザーUSTR代表に不快感を感じているようだ。この場合のタイムリーとは大統領の意にそってということだろう。一方、ライトハイザー氏は名うてのタフネゴシエーターとして知られている。強硬派の最右翼といってもいい。その人が中国との交渉で粘りに粘っている。大統領が設定した最終期限が迫ってもなかなか最終合意に至る道筋が見えてこない。募るイライラのはけ口が文書形式に対する不満というわけだ。こんな情報を見せつけられれば誰だって大統領の方が御し易いと思うだろう。27日から米朝の首脳会談が始まる。非核化で進展を得たい大統領と、制裁緩和を勝ち取りたい金委員長の戦いである。功を焦れば焦るほど交渉はやりやすくなる。金委員長はやすやすとトランプ大統領の術中にはまったふりをする。そんな映像が浮かんでくる。