双子の宇宙飛行士が地上とISS(国際宇宙ステーション)に別れて1年間勤務した。この間に2人の遺伝子に変化が見られたか。Yahooニュースがきのう、National Geographicの記事を翻訳して転載した。それによると変化は見られた。1つは、染色体の末端を保護するテロメア(末端小粒)の長さ。ISSに滞在したスコット・ケリー氏のテロメアは地上勤務だったマーク氏に比べて長くなった。加えて、「スコット氏の染色体の一部で逆位や転座が起こったり、DNAが損傷しているといった異常、そして遺伝子発現の変化も見つかった」という。この研究の成果は、4月12日付け学術誌「サイエンス」に掲載された。人間の遺伝子が環境によって変化する可能性を示唆している。今後の研究テーマだ。
論文の共著者で、米コロラド州立大学の医療研究者スーザン・ベイリー氏は、「こうした遺伝物質は、加齢や潜在的な健康リスクを示す指標だ」と話す。ISSに滞在中、それによる影響はあるのか、あるとすれば何か、「現時点で知ることは難しい」という。一卵性双生児。両者の遺伝子はほぼ同じものだと考えられている。その二人の遺伝子が環境によって変化することが実証されれば、進化論に大きな影響を与えることになる。だが、今回の実験はたった一人のデータにすぎない。データの量としては少なすぎる。この記事によると「スコット氏の体に出た影響が、彼の生理機能に特有のものか、同様の条件下に置かれた人の大部分に共通するのか、それを正確に知るためには、さらに多くの人を対象に研究しなければならない」と指摘する。
ダーウィンは、動植物は自然に適応しながら自然淘汰されてきたという学説を打ち立てた。これがダーウィンの進化論である。遺伝子の研究が進んで最近の学説の中には、遺伝子には「自己変革」する能力があるという仮説も出ている。一卵性双生児の研究がすすめば遺伝子が環境によって変化することが立証されるかもしれない。ダーウィンはあまたある遺伝子の中で適応力のある遺伝子が残ったとしているが、そうではなくて遺伝子が自ら環境に合わせて変化し、次世代に新しい遺伝子を継承したのかもしれない。研究はまだ始まったばかりである。何が真実か定かではない。だが、仮にそうだとすれば動植物の進化の基本的な考え方が変わってくる。人間社会も同じだ。見方が変われば解釈が変わり、対応も変わる。環境にあわせた「自己変革」が社会変革を呼び込むということになる。