死んだブタから取り出した脳に血液代わりの溶液を送り込む装置を開発し、死後4時間の時点で細胞レベルの活動を一部確認したと、米エール大の研究チームが17日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。

 この装置開発は米国立衛生研究所(NIH)の脳研究事業の一環で、実験には食肉用に処理されたブタの脳を使用。意識の回復を示すような活動は観察されなかった。

 脳の細胞や組織ではなく、脳全体を実験に使えるようになるため、今後は急性心不全や脳梗塞などで脳が損傷した際の新たな治療法を開発するのに役立つ可能性があるという。

 研究チームによると、死亡した人の脳にこの装置を使った場合、ブタと同様の観察ができるかは分からない。ブタの実験でも万一、意識の回復を示すような脳活動が観察された場合は麻酔を使ったり、温度を下げたりして直ちに止めるという。

 ただ、将来技術が発達して脳が装置内で「生き続ける」事態を避けるため、研究チームはあらかじめ倫理面から検討を重ね、許容される実験の基準を確立しておく必要があると指摘している。