【ワシントン、北京時事】ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は6日、中国からの輸入品2000億ドル(約22兆円)相当に対する追加関税を10日に25%へ引き上げる方針を表明した。先週の北京での貿易協議後に中国が態度を硬化させたと米メディアに説明。大筋合意が視野に入った途端に抜本的な貿易慣行是正策に難色を示した中国を「約束破り」と痛烈に批判した。

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 中国商務省によると、劉鶴副首相は9、10の両日、貿易協議のため米国を訪れる。訪米を見送るのではないかとの観測も出ていたが、引き続き交渉には応じ、話し合いでの問題解決を目指す。

 米中は中国の合意順守状況を監視・検証する機関設立を検討中。米国の交渉責任者を務めるライトハイザー代表は、事態が急変した理由を「合意に強制力を持たせる仕組みをめぐり中国国内で異論が出たため」とした。ムニューシン米財務長官は、交渉の9割を終えたと認識していたが、先週末にかけて「大幅に議論が後退した」と嘆いた。

 米経済団体によると中国は、米国企業に対する技術移転強制の禁止、産業補助金の削減、サイバー問題に関わるルール策定や法整備になお慎重姿勢という。ロイター通信は、中国が行政機関の通達などによる対応策にとどめたい意向と伝えた。米国が合意内容の全面公表を望んでいるのに対し、中国は拒否しているとも言われている。

 米中双方が譲らないのは、国内からの「弱腰」批判を避けるためでもある。米国では好調な経済や株価の回復がトランプ大統領の背中を押し、2020年の再選を見据えて対中強硬策に再び踏み切る余地を与えた可能性がある。

 一方、中国の習近平国家主席は4月下旬に開かれた巨大経済圏構想「一帯一路」に関する国際会議や大型景気対策などの経済運営に国内から一定の支持を得ており、過度な対米譲歩に懸念が高まっているとの見方も米メディアが報じている。