昨日発表された4月の経済指標が米中で軒並み悪化した。小売売上高、鉱工業生産という消費と生産に関連する重要指標だ。中国は前年同月比でプラスを維持しているものの、伸び率は大幅にダウン。米国も事前の予想を大幅に下回る状態で、両国経済の先行きが心配になる。単月の経済指標で経済全体の先行き占うのは難しいが、指標はいずれも貿易交渉が頓挫する前の数値。両国経済の実態を反映したものだ。それだけに余計に想像力が膨らむ。米中の貿易協議の決裂は、減速し始めた実体経済に追い打ちをかけるのではないか。経済指標の悪化は逆説的だが、両国が歩み寄る余地が大きくなることを意味している。
4月の統計は習近平主席にとっては予想外の事態だっただろう。貿易摩擦の深刻化に伴って中国政府はこれまで様々な経済対策を打ってきた。その効果が現れたのか、1−3月期のGDPは前年同期比6.4%増と予想外の水準を維持した。この数字が発表されたのは4月17日。習主席は経済の先行きに自信を強めたのではないか。そして5月上旬に北京で始まった閣僚級の貿易交渉で合意文書の修正を求めたのである。そんな中で発表された4月の小売売上高は前年同月比7.2%増と、「ほぼ16年ぶりの低い伸び」(時事ドットコム)にとどまった。これは「景気底入れの兆しを追い風に米国との貿易協議で強硬姿勢に転じた習近平指導部」(同)にとって、大きな「誤算」(同)だったのではないか。
一方の米国。トランプ大統領は景気指標を無視、相変わらず強気だ。だが、メディアの報道によると自動車関税導入の最終判断を6カ月先送りするという。加えて、「メキシコとカナダとは鉄鋼・アルミ関税の撤廃に向けて合意が近い」とも報道されている。中国とのタフな交渉と並行してほかの関税問題を抱えたくないのだろう。周辺情報にはチラチラと弱気が見え隠れしている。地方遊説ではトランプ氏はFRBが金利を引き下げ金融緩和を復活すれば、「米GDPは5%成長する」と大ボラを吹きまくっている。6月のG20サミットで米中の首脳会談が実現する見通しだが、表面的に強気な姿勢を貫いている両首脳も内心は穏やかでないのだろう。ムニューシン財務長官は近く米中の通商協議を再開すると話している。
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