[香港 28日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 中国電子商取引大手アリババ・グループが香港での重複上場による最大200億ドルの調達に向けて作業を進めていることが明らかになった。
香港当局から上場計画をはねつけられ、ニューヨークでの新規株式公開(IPO)に踏み切ってから5年。改めて香港での上場を目指すことになるが、創業から間もないライバルと並んで新たに資金を集めようとする姿勢からはアリババの市場独占が脅かされている様子が透けて見え、上場は厳しい道になりそうだ。
創業者のジャック・マー氏は以前から上場先として香港に目を付けていた。しかし香港当局は2014年、自選の幹部グループが取締役会の大半の任命権を握るマー氏の企業統治を問題視し、上場申請の受け入れを拒んだ。マー氏は最終的にニューヨーク市場で過去最大となる250億ドル規模のIPOを実施した。しかしその後、香港取引所は上場要件を緩和。ロイター通信によると、アリババは数カ月以内に香港で上場を申請する可能性がある。
香港上場にはもっともな面もある。アリババ株は企業規模がほぼ同じの同業、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)に比べて割安な水準で取引されている。香港市場ではハイテク関連株が少ないのも理由の1つ。香港上場によって、アリババにより馴染みの深い中国本土の投資家の資金にもアクセスしやすくなる。
だが、それでもこのタイミングで流動性や資金を求めるというのは気になる。アリババ株は24日の出来高が約33億ドル相当に上り、ニューヨーク証券取引所上場銘柄でドルベースではこの日最大だった。また、営業キャッシュフローは1─3月期で約30億ドルもあった。
しかしアリババは市場で優位な立場にあるから香港で上場するわけではないだろう。
中国の景気は変調を来し、貿易やハイテク分野での米国との関係悪化がアリババの経営を圧迫。同社の株価はこの1年間で22%下げた。クラウドコンピューティングから東南アジアでの電子商取引事業までさまざまな分野で投資がかさんだが、いずれの事業もまだ十分な利益を上げておらず、一方で中国では成長が鈍化。ピン多多(ピンドォドォ)など新興のライバルからの突き上げも強まっている。香港上場計画でこうした「亀裂」がより鮮明になった格好だ。
●背景となるニュース
・ロイターは28日、関係筋の話として、アリババが香港上場による最大200億ドルの調達を検討していると報じた。
・アリババは金融アドバイザーと作業を進めており、早ければ19年下半期に香港上場を内々に申請する方針だという。
・アリババは当初、上場先を香港とする計画だった。しかし香港当局は、自選の上級幹部グループが取締役会の大半の任命権を握る企業統治を問題視し、申請の受け入れを拒否。アリババは14年にニューヨークで史上最大となる250億ドル規模のIPOを実施した。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。