• 債務圧縮進展せず、懲戒処分は「妥当」だと欧州委員会が判断
  • 制裁措置はユーロ圏財務相の承認が必要、7月上旬にも表明か

欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、債務増大に歯止めをかけることのできないイタリアに対する懲戒手続きに着手した。35億ユーロ(約4270億円)の制裁金につながる第一歩となる。

  欧州委は5日発表した報告書で、イタリアが巨額債務をEUの財政規則に沿って圧縮することにおいて十分な進展をしておらず、懲戒処分が「妥当だ」との判断を示した。2018年末に市場を揺るがせた予算を巡る対立の激化を意味する。イタリアのポピュリスト政権の指導者の1人、サルビーニ副首相はEUの財政規則を変える決意を示している。

  欧州委の発表を受けてイタリア国債は下落。10年物のドイツ債とのスプレッドは280ベーシスポイント(bp)と、ポピュリスト政権誕生前の2倍以上になった。

  報告書はイタリアについて、国内総生産(GDP)に対する債務の比率は「大幅な債務増大の『雪だるま』効果により2019、20両年とも上昇するだろう」と指摘。「短期的な借り換えリスクは限定的だが、高水準の公的債務は引き続きイタリア経済が脆弱(ぜいじゃく)性を抱える原因だ」と分析した。

  今回の措置は複雑なプロセスの第一歩にすぎず、プロセスの過程ではEU加盟国政府が何回か検証する。制裁金は比較的少額なものの、EUが正式な懲戒を打ち出せば、金融市場の圧力にさらされ与党内の不協和音に揺れるイタリアにさらなる問題をもたらす。

  EU財務相会合も欧州委の勧告を支持するかどうかを表明する必要があり、恐らく7月上旬の次回会合で行う見込み。欧州委はその時点から20日以内に、イタリアの国内総生産の0.2%(約35億ユーロ)の制裁金を科すかどうかを決定する。イタリアが債務削減のためのEUの勧告に従わない場合、制裁金は引き上げられる可能性がある。

  EUはこの手続きを開始したことはあるが、過剰債務のために制裁金を実際に科したことはこれまでに一度もない。

  サルビーニ副首相の政党「同盟」の外交問題責任者、マルコ・ザニ氏は、欧州委の行動は政治的な動機によるものだとし、EU規則の変更をあらためて呼び掛けた。

原題:EU Sets in Motion Disciplinary Process Against Italy Over Debt(抜粋)
EU Sets in Motion Discipline Process Against Italy Over Debt (1)