[ビリニュス 6日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は6日、少なくとも来年半ばまで金利を据え置く方針を明らかにした。ドラギ総裁は貿易摩擦やブレグジット(英国の欧州連合離脱)といったリスク要因が存在するとした上で、利下げや追加資産購入の可能性も視野に状況を見守る考えを示した。 

この日の理事会では予想通り主要政策金利を据え置くとともに、金利ガイダンスを変更。金利据え置きの期間を、従来の最低年末までから「最低2020年上半期にかけて」に延長した。さらに新型の貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO3)に適用される金利を、最も低い場合でマイナス0.3%(中銀預金金利に0.1ポイント上乗せ)とすることも決定した。 

ただ市場では、ドラギ総裁の利下げに関する踏み込みが浅かったとの見方が広がり、株式や債券が売られた。 

ECBはリファイナンス金利を0.00%、中銀預金金利をマイナス0.40%にそれぞれ据え置いた。ドラギ総裁は記者会見で、決定は全会一致だったとした上で、景気リスクは下向きに傾いていると表明。「英国の欧州連合(EU)離脱を巡る先行き不透明性のほか、一部の新興国の脆弱性を巡る不確実性に加え、世界的な貿易の伸びを巡る先行き不透明性は、3月時点のわれわれの予想を超えて増大した。このため、フォワードガイダンスを延長した」と説明した。 

加えて「一部メンバーが追加利下げの可能性を引き上げたほか、資産買い入れ再開やフォワードガイダンス再延長の可能性を引き上げるメンバーもいた」と指摘。「マイナスの非常事態」が発生した場合に行動する準備を巡って議論があったと明らかにした。 

TLTRO3については、リファイナンス金利(現行0%)に0.1ポイント上乗せした金利が適用されるが、一定の融資基準を達成した銀行については、中銀預金金利(同マイナス0.4%)に0.1ポイント上乗せした金利が適用されるとした。最低金利の適用には、2021年3月末時点で少なくとも2.5%の貸し出しの伸びを達成することが条件となる。マイナス金利での貸し出しは、中銀が利子を付けて金融機関に資金を供給することを意味する。 

この他、スタッフ予想も公表され、19年のユーロ圏成長率とインフレ率をやや上方修正したものの、欧州経済の減速は予想よりも深刻で長引くとの見方から、20年と21年の予想は若干下方修正した。 

ECBは19年の経済成長率は1.2%になるとし、3月に示した予想の1.1%から若干上方修正した。インフレ率は1.3%とし、1.2%から引き上げた。ただ成長率は20年と21年はともに1.4%になると予想。従来は20年は1.6 %、21年は1.5%としていた。 

ECBのインフレ目標は2%付近だが、ここ数年、インフレ目標は達成できていない。ただドラギ氏は、デフレに陥る公算はなく、景気後退(リセッション)に陥る可能性は極めて低いという認識を示した。 

この日、ユーロ圏のインフレ期待を示す指標は過去最低水準に接近。短期金融市場は、ECBが年内に約70%の確率で10ベーシスポイント(bp)の利下げを実施すると予想した。 

INGドイツの首席エコノミストは「フォワードガイダンスの追加修正は、市場期待に合わせようとする新たなECBの動きに過ぎない」と話した。 

ロイターが実施したエコノミスト調査ではECBは21年まで利上げは行わないとの見方が示されたほか、ECBの次の動きは利上げではなく利下げになるとの予想も示されている。 

クローズ・ブラザーズ・アセットマネジメントの幹部は「金利がすでに0%で、利用可能な財政手段もない。選択肢は幾分限られている。年内の量的緩和再導入が可能性の高いシナリオとなりつつある」と話した。