• OECDの作業計画を承認、2020年までの最終合意目指す-声明
  • 法人実効税率に下限設定、低課税率国への租税回避防ぐ

20カ国・地域(G20)は9日、福岡市での財務相・中央銀行総裁会議で、グーグルやフェイスブックなど巨大IT企業の課税逃れを防ぐ国際的な「デジタル課税」の統一ルール取りまとめを進めていくことで一致した。ただ、米欧中などの利害が絡むため、経済協力開発機構(OECD)が目指している2020年末の最終合意に向けて難航する恐れもある。

  共同声明には、OECDの作業計画を承認することを明記した上で、2020年までの最終報告書によるコンセンサスに基づく解決策のための取り組みをさらに強化するとした。麻生太郎財務相はG20閉幕後の9日の記者会見で、福岡G20での2大成果の一つに挙げ、各国の認識が狭まり、声明文に明記することができたことについて「よくここまで来た」と評価した。

G-20 Finance Ministers and Central Bank Governors Meeting
G20財務相・中銀総裁会議(福岡)Photographer: Franck Robichon/Pool via Bloomberg

  OECDは5月、IT企業の租税回避を防ぐため、法人実効税率に下限を設けるとともに、新たな課税手法を列挙した作業計画を策定。20年末までに最終報告書をまとめる方向で129カ国・地域の合意を得ている。IT企業の課税逃れを一刻も早く取り締まりたい欧州各国が独自の課税方針を打ち出す中、福岡G20で議長国の日本は共通の枠組みづくりの加速にはG20のリーダーシップが必要と訴え、OECDの作業計画を承認した。

G-20 Finance Ministers and Central Bank Governors Meeting
麻生太郎財務相Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  福岡G20に合わせて開催された8日の国際租税シンポジウムには、11カ国の財務相とグリアOECD事務総長が参加。麻生財務相は最終合意には妥協の精神と政治的関与が必要とし、「G20が模範を示すべきだ」と訴えた。初日の会議終了後には「デジタル課税に関しては20年までの合意に受けて大きな政治的モメンタムが出来上がったのが大きな成果」と述べた。

  国際課税を巡っては、GAFAを有する米国だけでなく、バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイの頭文字から取ったBATHを有する中国も、IT企業を狙い撃ちする国際課税の在り方に懸念を示している。一方、欧州委員会は既存企業の平均実効税率23.2%に対して、デジタル企業は9.5%と半分以下になっていることを問題視、欧州各国は独自の課税方針を打ち出している。

  8日のシンポジウムに参加したムニューシン米財務長官は、フランスや英国の税制案に懸念を示した上で、「課税ベースはあくまでもコンセンサス、分断されたアプローチがあることは誰にとっても好ましいことではない」と指摘。さらに「世界は急変しており、新しいビジネスモデルも台頭している。解決策が今機能するだけではなく、向こう10年間機能することを担保しなければいけない」と述べた。

  OECDの作業計画では、法人実効税率に下限を設けて、低税率国への租税回避を防ぐとともに、市場国にとって物理的な拠点がある法人にしか課税できなかった国際課税の原則を見直すことでも一致。市場国内に拠点がなくてもSNSや検索エンジンのユーザーがいる場合に課税できるとする英国案や、営業上のブランド価値を課税根拠とする米国案、継続した売り上げなど重要な経済的存在が認められる場合に課税する新興国案を候補に挙げ、来年1月までに絞り込む計画だ。

  中国の劉昆財政相は、「ルールが複雑で、各国当局の能力を超えてしまうのであれば問題」とした上で、「投資を誘致し、経済を成長させるために途上国としては一定の柔軟性が必要」と述べた。フランスのルメール経済・財務相は、企業に対して差別的な課税措置を導入しないよう慎重になるべきだとの考えを示し、デジタル課税の実効性確保のためには「最低税率が必要」などと指摘した。