[ロンドン 10日 ロイター] – イングランド銀行(英中銀)金融政策委員会のテンレイロ委員は10日、英国が条件などで合意しないまま欧州連合(EU)を離脱した場合は、英中銀は利下げに動く公算が大きいとしながらも、利上げが必要になるリスクも若干存在しているとの見方を示した。 

テンレイロ委員は講演後の質疑応答で、英中銀は合意なき離脱の際は利下げを実施する公算が大きいとの見解を表明し市場へのメッセージを簡略化するかとの質問に対し、「そのように単純であることを望む」と指摘。「中銀は利下げに動く公算の方が大きいと考えているが、英ポンド相場の下落、関税もしくは非関税障壁の引き上げで物価が上昇すれば、金融引き締めが必要になる可能性もある」と述べた。 

ただ講演では、条件などで合意した上でEUから離脱できると想定すると、利上げが必要になるのは当初考えられたよりも先になる可能性があるとの見方を表明。 

離脱合意が得られた後は、英ポンド相場は上昇すると予想。ポンド相場の上昇は、現在みられている世界経済の減速とともに労働市場で高まっているインフレ圧力を相殺する方向に働き、英中銀は当面、政策金利を現在の0.75%にとどめることができる。 

テンレイロ委員は講演で「世界見通しの軟化の兆候、およびこのところの動向を踏まえると、インフレ圧力が十分に増大し、自分自身が利上げに投票するまでの時間は長引く公算が大きい」とし、こうした事態は「向こう数カ月は起こらないと考えている」と述べた。 

その上で、EUと離脱合意が得られた際は、向こう3年間にわたり「若干の引き締め」が必要になるとの考えを示した。 

一方、英国が合意がないままEUを離脱した場合は、衝撃を和らげるために金融緩和が必要になる公算が大きいと指摘。英国債利回りの低下については、英国のEU離脱だけでなく、世界経済に対する懸念も反映しているとの見方を示した。 

カーニー総裁は前週、合意なき離脱のほか、通商を巡る世界的な緊張の高まりに起因するリスクは増大しているとの認識を表明している。 

市場では、合意なき離脱の可能性が高まっていることから、英中銀の次の動きは利上げではなく利下げになるとの見方が出ている。