[10日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は10日、下院金融サービス委員会で証言し、貿易摩擦や世界経済の減速による米景気拡大への影響に対処するため「必要に応じ行動する」と述べた。今月末に開催する米連邦公開市場委員会(FOMC)で約10年ぶりとなる利下げ実施に向けた下地を整えた格好だ。
市場関係者のコメントは以下の通り。
<クレセット・キャピタルマネジメント(シカゴ)の最高投資責任者(CIO)、ジャック・アブリン氏> フェデラルファンド(FF)金利先物は連邦準備理事会(FRB)が利下げを決定する確率は100%であることを示している。FRBは今月末の会合で利下げを決定する公算が大きい。ただ向こう1年間で1%ポイントの利下げが実施されるかどうかはまだ分からない。 パウエル議長は7月の利下げに向け地合いを整えた。
<ナショナル・セキュリティーズ(ニューヨーク)の首席市場ストラテジスト、アート・ホーガン氏> 6月の雇用指標は5月より良い内容で、主な懸念事項は労働市場でない。第2・四半期の成長が控えめになる中、米連邦準備理事会(FRB)が1つの指標のみを注視しているわけでない。これらのことからFRBが緩和姿勢を取っているようにも感じられるのは確かだ。 ただ、FRBは現在から月末の会合までに数多くの情報を入手することになる。今週はインフレ指標、向こう数週間中に住宅市場指標、企業決算も出てくる。これらすべてがFRBの次の動きに影響する。
<レノックス・ウエルスアドバイザーズ(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、デビッド・カーター氏> 経済は底堅く推移しているように見えるが、利下げ圧力は高まっており、連邦準備理事会(FRB)は難しい立場に置かれている。 国外では経済成長を巡る不確実性が継続しており、通商を巡る懸念も払拭されていない。こうしたことだけでも、保険的な意味合いでの利下げの論拠となる可能性はある。
インフレ率が引き続き抑制されている限り、パウエル議長には利下げ余地がある。市場が25ベーシスポイント(bp)の利下げで満足するのか、50bpの利下げを予期しているのかは分からない。いずれにしても、今月の連邦公開市場委員会(FOMC)で利下げが決定されると確信している。
大統領が自身の見解を明白に表明している点で、パウエル議長はこれまでみられなかった状況に置かれている。
<インディペンデント・アドバイザー・アライアンスの最高投資責任者、クリス・ザッカレリ氏> パウエル議長は、「保険」としての利下げが重要であるとの根拠を明確にした。雇用統計は底堅い内容だったが、7月に利下げが実施される公算は増したようにみられる。
企業の設備投資が著しく減速したことに言及した。住宅への投資、製造業活動も第2・四半期に減速したもようだ。つまり、保険としての利下げが必要である根拠が企業の投資環境の悪化にあると論証している。証言の大半は緩和に偏っており、極めてハト派的だ。
FRBの独立性についても強調した。利下げの根拠について大統領が公言しているためではなく、事業環境が悪化しているためであると引き続き明示したい考えだ。
<バークレイズのグローバル物価連動リサーチ部門責任者、マイケル・ポンド氏> パウエル議長が議会証言で「不確実性が継続する」と述べた点が注目され、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での25ベーシスポイント(bp)利下げには、今後の経済指標ではなく不確実性のみで十分との見方が広がった。これにより、米国債のイールドカーブはややブルスティープ化し、株価は反発した。オーバーナイトの原油先物高も追い風だ。
議会証言を受け、市場は米連邦準備理事会(FRB)が保険としての利下げに動くとの見方を強めている。経済が悪化している中で利下げすれば、成長鈍化を相殺するためとなるが、経済が堅調な中で利下げすれば、市場は保険としての利下げと捉え、リスク資産の押し上げにつながるだろう。