[香港 11日 ロイター BREAKINGVIEWS] – 日本と韓国の政府間対立は、「相互確証」的な痛手をもたらすだろう。韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、日本側が韓国の基幹産業である半導体企業を標的に導入した輸出制限に対抗し、日本の機械や設備、製品を標的にする可能性がある。 

ただでさえ両国経済がそれぞれ大きな圧力にさらされているこの時に、850億ドル(約9兆2000億円)規模の二国間貿易に暗い影を落とすことになる。 

韓国は日本への報復を検討している。 

二国間の緊張は昨年、元徴用工を巡って韓国最高裁が日本企業2社に対し賠償を命じたことで高まった。日本側は、この問題は1965年の日韓請求権協定で解決済みだとして判決に反発。明らかに憤慨した安倍晋三首相は、特定の半導体材料を韓国に輸出する際は契約ごとに審査・許可することを義務付けることで反撃した。 

文大統領の報復手段は限られている。 

時価総額2550億ドルのサムスン電子など韓国企業は、日本製の機械や素材、化学製品に大きく依存しているが、それに比べて日本への輸出量ははるかに少ない。この不均衡により、韓国は対日貿易赤字をずっと抱えており、昨年の額は240億ドル超に上った。 

そのため、いかなる措置も韓国国内の半導体やテクノロジー産業にダメージを与えるリスクがある。また、世界貿易機関(WTO)から反感を買う可能性もある。 

それでも韓国政府の決意は固い。文大統領は10日、大手財閥30社の首脳級を集め、部品や材料の調達支援を大幅に強化すると述べた。 

その詳細は不明だが、世界最大の半導体・スマートフォンメーカーであるサムスンのような企業が調達先を変更すれば、長期的には既存のサプライヤーが市場シェアを失うことになりかねない。税関データによると、日本は2018年に240億ドル相当の資本財を韓国に輸出している。 

対立のいかなる激化も、経済への圧力を増すだけだ。両国経済は、ともに世界的な需要の減速や米中貿易戦争の対応に追われている。 

韓国は今月、今年の輸出見通しを3・1%増から5%減へと下方修正した。8日に発表された日本の5月機械受注は、設備投資の先行指標である民需の受注額が前月比7.8%減と、市場予想を下回った。 

第2の貿易戦争に突入するのは、無謀だろう。 

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。