IAEA=国際原子力機関は22日、病気療養中だったトップの天野之弥事務局長が死去したと発表しました。各国からその死を悼み、功績をたたえる声があがっています。

IAEAは22日、天野事務局長が今月18日に死去したことを明らかにしました。72歳でした。関係者によりますと天野氏は去年から体調を崩してたびたび日本に帰国し、理事会に提出する予定だった手紙の中で辞任を申し出ていたということです。

天野氏は世界で唯一の被爆国である日本の出身であることを強調し、日本が原子力の平和利用を進めてきたことを各国に訴え、2009年12月、日本人としては初めて、IAEAの事務局長に就任しました。

在任中は、イランの核開発問題をめぐり2015年に妥結した核合意を受けて、核施設への査察など核開発を制限する取り組みの検証などを指揮してきました。

亡くなった天野氏に対して各国からその死を悼み、功績をたたえる声があがっています。

来日していたアメリカのボルトン大統領補佐官は、声明を発表し「彼の核不拡散への真摯(しんし)な取り組みと原子力の平和利用を訴える姿勢は、10年近くにわたるIAEAトップとして比類なきものだった」と功績をたたえました。

アメリカと対立するイランのアラグチ外務次官も「私たちは緊密に連携して取り組んできた。IAEA事務局長としての彼の経験豊富で専門的な手腕をたたえたい」と述べました。

さらに国連のグテーレス事務総長もツイッターに、「原子力の平和利用における天野氏の目覚ましい貢献と多国間主義への取り組みは、私たち全員に記憶されるだろう」と書き、その死を悼みました。

3期目を務めていた天野氏が2021年までの任期半ばで亡くなったことを受けてIAEAは後任の事務局長の選出について近く、対応を決めることにしています。

後任の事務局長は

後任の事務局長は

後任の事務局長について複数のメディアは、有力な候補として、来年のNPT=核拡散防止条約の再検討会議で議長を務める、アルゼンチンのIAEA担当大使、ラファエル・グロッシ氏や、IAEAで主任調整官をつとめるルーマニアのコーネル・フェルタ氏の名前を伝えています。

このうち、グロッシ氏は、天野氏の死去が発表される前の19日、NHKの取材に対し、次の事務局長の選出に向けて動き出していることを明らかにしていました。

この中でグロッシ氏は、天野氏の功績をたたえたうえで、「IAEAは新たな指導者を探す必要があり、他の理事国も動き出している。アルゼンチンは、立候補を擁立する方向であり、今後も貢献できることを望んでいる」と述べ、次の事務局長に立候補することに意欲を示しました。