• 22年度までに1万2500人削減-4~6月期営業益は過去10年で最低
  • 西川社長は工場閉鎖の可能性示唆も、引き当て済みは一部のみ
Nissan Bets on New Skyline Model to Heal Brand Image After Ghosn
Photographer: Noriko Hayashi/Bloomberg

業績不振が続いている日産自動車は25日、効率化に向けて2022年度までに1万2500人規模の人員削減を実施する方針を明らかにした。カルロス・ゴーン前会長(特別背任で起訴)が20年前に断行したリストラ以来の規模となるが、当時とは状況が異なり、V字回復は望めないとの声も出ている。

Nissan Bets on New Skyline Model to Heal Brand Image After Ghosn
日産自動車のロゴ

日産の発表資料によると、世界の生産能力を10%削減するのにあわせて計1万2500人規模の人員削減を実施する予定。まず18-19年度に米国やメキシコ、インドなど8拠点で6400人規模を減らす。これには九州や栃木など国内の拠点も含まれている。続いて20-22年度にも6拠点で6100人規模の削減を実行する方向だ。車種についても10%以上削減して重要モデルに投資を集中して競争力を高める。

ゴーン前会長の逮捕からの混乱や世界的な自動車市場の減速を受けて日産の業績は悪化している。同日発表した4-6月期の営業利益は前年同期比99%減の16億円と市場予想を大幅に下回り、四半期としては過去10年で最低の水準まで落ち込んだ。

4-6月期実績
・売上高:13%減の2兆3724億円(市場予想2兆6300億円)
・営業利益:99%減の16億円(市場予想372億円)
・純利益:95%減の64億円(市場予想346億円)

日産の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)は横浜市の本社での会見で4-6月期の数字は会社側の慎重な想定をさらに下回るものだったと認めた。今後の工場の合理化については海外拠点を中心に考えているとした上で「1ライン止めることもあれば工場ごとということもある」と述べ、工場閉鎖に踏み切る可能性も示唆した。

1999年、経営危機に直面していた日産に出資した仏ルノーから送り込まれたゴーン前会長は「日産リバイバルプラン」を発表。国内5工場の閉鎖とグループ全体の14%にあたる2万人超の人員削減などを打ち出したが、今回のリストラはそれに次ぐ規模となる。

東海東京調査センターの杉浦誠司アナリストは電話取材に、自動車業界を巡る環境が厳しさを増す中、米フォード・モーターやゼネラル・モーターズ(GM)なども大規模なリストラに着手しており、日産の決定は「その流れに乗っている」ものだと評価。

ただ、人員削減に必要なコストをすべて引き当てていないとみられることなどから、巨額の赤字を一度に出して臨んだゴーン改革と比べて「V字回復は限定的なものになるだろう」と述べた。

業績回復の専任役員を務める関潤専務は会見で、18-19年度に予定する6400人強の人員削減に必要は費用は昨年度までにほぼ引き当て済みとする一方、残りについては順次引きあてるとした。

日産は5月に今期の営業利益が前期比28%減の2300億円と4期連続の減益でリーマン・ショックで営業赤字となった09年3月期以降で最も低い水準となる見通しを示しており、今回は通期業績見通しは据え置いた。

西川社長は現在の低迷の原因としてゴーン体制で高すぎる目標を設定したことから販売奨励金やレンタカーなどの法人向け販売を増やして安売りを進めたこともあるとし、是正を進めることを表明していた。4-6月の米国販売台数は3.7%減の35万1000台。北米事業の営業利益は6億8800万円と前年同期の495億円から大きく減少し、回復の兆しは見えていない。

西川社長はディーラー在庫は着実に減少しているとし、第2四半期の滑り出しは想定に近く、今期末までの挽回は可能との考えを示した。一方、電動化や自動運転など新技術への対応で増えている開発費は今後も膨らむ見通しで22年度までに足元から10%の増加を見込んでいると述べた。

4-6月期の世界販売
・6%減の123万1000台
 ・日本:2.6%減の12万6000台
 ・中国:2.3%増の34万4000台
 ・北米:6.3%減の45万2000台
 ・欧州:16%減の13万5000台
 ・その他:13%減の17万4000台

米国と中国の二大市場で新車販売が低迷する中、他の自動車メーカーも苦しんでいる。三菱自動車の4-6月期の営業利益は前年同期比86%減の39億円と最も低い市場予想を下回り、経常損益は赤字に転落した。車種構成など販売内容が悪化したほか為替のマイナス影響も受けた。

独ダイムラーも今月、過去1年余りで4回目となる利益予想の下方修正を発表。世界的な需要低迷に対応するためコスト削減の取り組みを強化し、車種のラインアップを縮小する計画を公表していた。

ゴーン体制の反省を踏まえて、日産では指名委員会等設置会社への移行など社外取締役を強化して権力の集中を排除する取り組みを進めている。西川社長は「果たすべき責任の大きなマイルストーンは越えた」とし、今後は「できるだけ早い段階で指名委員会で後継の議論をしてもらいたい」と話した。