ジョンソン新英首相=24日、ロンドン(EPA時事)

 【ロンドン時事】ジョンソン新英首相が政権の最重要課題をめぐり、就任2日目で早くも行き詰まった。メイ前首相がまとめた欧州連合(EU)離脱案の見直しをEUに要求したものの、即座に拒否された。「合意なき離脱」を目指せば、議会が「ノー」を突き付けるのは必至。秋に総選挙へもつれ込むシナリオが現実味を増してきた。

英首相の「脅し」拒絶=離脱案を堅持-EU

 「離脱案は3度否決された。この国には受け入れられない」。首相は就任翌日の25日、初の議会演説を行い、離脱案の再交渉か「合意なし」か、二つに一つだと表明した。ただ、その後に電話会談したEUのユンケル欧州委員長は、現在の案が「最善かつ唯一可能な合意だ」と断言。立場の違いは決定的だ。
 首相もEUも熟慮の上での発言で、譲歩は容易ではない。しばらくにらみ合いを続けた後、首相が「EUは合意を拒んだ」と主張し、「合意なき離脱」に向かう可能性がある。

 これに対し下院は「合意なし」に反対の議員が多数。首相が強行しようとすれば、不信任を突き付けられる公算が大きい。

欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長=6月21日、ブリュッセル(EPA時事)

 しかし、ここからが勝負となる。首相が不信任後の総選挙で「議会の妨害を阻止し、EU離脱を達成するための一票を」と訴えれば、離脱派の有権者の結集もあり得る。

 その場合、総選挙は事実上、「合意なき離脱」か「EU残留」かを懸けた「2度目の国民投票」となる。現行の完全小選挙区制では野党各党の選挙協力は実現しにくい。首相率いる与党・保守党に勝機はある。

 英政界では、首相はここまで織り込み済みと考えられている。EUの反発を買う強気一辺倒の姿勢は、離脱支持者にアピールするための巧妙な選挙戦略となる。

 首相は前倒しの総選挙を否定している。しかし「(離脱期限の10月末まで)待ちはしない。国民はもう十分待った。行動する時が来たのだ」と就任直後の意味深な発言もあった。大一番への決意を示唆したと臆測をかき立てている。