[31日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は30─31日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を2.00─2.25%に25ベーシスポイント(bp)引き下げることを決定した。利下げは2008年以来初めて。FRBは世界経済を巡る懸念のほか、国内インフレの低迷に言及し、必要に応じて一段の利下げを実施する用意があることを示唆した。 

市場関係者のコメントは以下の通り。 

●年末に向け追加利下げ圧力高まる公算 

<USバンク・アセント・プライベート・ウエルス・マネジメント・グループのグローバル投資ストラテジスト、トム・ハインリン氏> 25ベーシスポイント(bp)の利下げを実施したほか、今後入手される指標を見極めるという文言を維持し、追加利下げに含みを残した。市場予想の中ほどの結果と言える。今年は2─3回、来年は1回の利下げが実施される可能性が残されたわけだが、これは市場が織り込んでいる予想と一致しており、その見通しに変更はない。 
 しかし、追加利下げの可能性を残したことによって、今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)を巡るボラティリティーは高まる可能性がある。市場にあと2回の利下げの可能性が織り込まれているとすれば、年末に近づくにつれて、利下げに向けた圧力は高まる公算が大きい。 

●保険的な利下げ、9月追加緩和につながらず 

<サビルス(ニューヨーク)の主席エコノミスト、ヘイディ・ラーナー氏> 今回の利下げが自動的に9月の追加利下げにつながるとは考えていない。今回の利下げを受けても、FRBは見通しに対する不確実性は払拭できないとしているが、将来の道筋を考えるとのFRBの表明は、現実的な緊急性があることを示す文言ではないような印象を受ける。 
 一部では50ベーシスポイント(bp)の利下げ決定されるとの予想も出ていた。ただ、今回は保険的な意味合いを持つ利下げだったと考えているため、追加利下げでフォローアップする必要があるのかは不明だ。 

●利下げに2人が反対、ややタカ派的 

<INTL FCストーンの店頭外為・金利部門マネージングディレクター エリック・ドノバン氏> 米10年債利回りは直近15分間で1ベーシスポイント(bp)のレンジ内で推移した。多くの市場関係者が25ベーシスポイント(bp)利下げは織り込み済みと指摘しており、(市場の)反応は基本的にはなかったと言える。 
 今回の政策決定では2人の米連邦準備理事会(FRB)メンバーが金利据え置きを主張し、反対意見がこれまでで最も多かった。想定よりもややタカ派だろう。5段階評価で非常にハト派的を1、非常にタカ派的を5として、今回の決定判断は3か4だ。この水準は市場が実際に見込んでいたものよりややタカ派的と言えるが、大幅ではなく、緩和方向への扉は開かれたままだろう。 

●主要指標改善しなければ9月に追加利下げへ 

<RBCキャピタル・マーケッツのシニア米国エコノミスト、ジェイコブ・オウビナ氏> FRBは文言やシグナルにとりわけ気を使っている。計画よりも2カ月早いバランスシートの縮小終了が経済に及ぼす実質的な影響は軽微だろうが、シグナルを発するという観点から見れば、景気拡大維持に向け可能な措置をすべて講じるという持説を鮮明にしたことになる。 
 25ベーシスポイント(bp)の利下げはほぼ確実視されていた。2人のメンバーが反対票を投じたことも驚きではない。ジョージ・カンザスシティー地区連銀総裁とローゼングレン・ボストン地区連銀総裁は比較的タカ派的なメンバーで、金利据え置きを主張してもおかしくはない。 
 そして、追加利下げに含みを残し、国際的な情勢に懸念を示すと同時に状況を監視を続けると表明した。欧州PMI(購買担当景気指数)など、主要指標が目立った改善を遂げなければ、FRBが9月に25bpの追加利下げを実施する可能性は高いだろう。 

●市場はあと2回の追加利下げ見込む 

<ヒュー・ジョンソン・アドバイザーズ(ニューヨーク)の最高投資責任者(CIO)、ヒュー・ジョンソン氏> 市場では3回の利下げが織り込まれている。今回と、おそらく12月、その後は今から1年後。米10年債利回りのほか、株価は基本的にこうした見通しに沿った水準にある。 
 ただ、2回の追加利下げ見通しはそれほど確固たるものではない。利下げが休止されるとの観測も出ている。 

●今後数カ月間の政策余地残す 

<シチズンズ銀(ボストン)のグーバル・マーケッツ部部長、トニー・ベディキアン氏> おおむね予想通りで、25ベーシスポイント(bp)の利下げに大きなサプライズはない。米連邦準備理事会(FRB)は引き続き控えめなインフレや世界の動向を理由に挙げている。 
 フォワードガイダンスはこれまでのものとほぼ変わらなかった。FRBは労働市場が堅調とし、緩やかな成長に向けた合理的な兆しがあると認めた。今後数カ月の政策判断について広範な余地を引き続き残している。 

●米経済は堅調と判断、9月利下げの公算小 

<コモンウェルス・フィナンシャル・ネットワークの最高投資責任者、ブラッド・マミリアン氏> 米連邦準備理事会(FRB)は利下げの根拠について、状況が考えられているよりも悪化しているからではなく、予防的な利下げであることを明確にした。利下げを正当化するリスクについても踏み込んでおらず、FRBは今後様子見姿勢を維持し、9月に追加利下げに動くことはないと考える。 
 市場にとってはほぼ期待通りの結果となったはずだ。利下げ幅が50ベーシスポイント(bp)でなかったこと、追加利下げの手掛かりがさほど示されなかったことで、一部失望感が広がった可能性はある。しかし、FRBが事実上、米経済は堅調に推移していると認めたことを考慮すれば、マイナスの反応は短期的なものにとどまるだろう。