• 徴用工対抗でなく、サプライ網や日本企業の影響ない-世耕経産相
  • 韓国政府は断固とした姿勢で対応すると反発

日本政府は2日、安全保障上の輸出管理で手続き簡略化など優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定した。政令改正は28日に施行される。世耕弘成経済産業相が記者会見で発表した。韓国政府は断固とした姿勢で対応すると反発している。

世耕氏は会見で、今回の措置は輸出管理上、「必要な見直しで、粛々と手続きを進めた」として、日韓関係に影響を与える意図は全くなく、徴用工問題などへの「対抗措置といった種類のものでもない」と説明した。グローバルのサプライチェーン、日本企業への影響は「基本的にはない」とも述べた。

Japan to drop South Korea from a "white list"
閣議後に会見する世耕・経済産業相

日本は、米国や欧州を中心に兵器拡散の恐れがないと認めた27カ国を「ホワイト国」としており、韓国はアジアで唯一指定されていた。除外されると数年分をまとめて認める包括許可ではなく輸出機会のたびに個別許可が必要となる。対韓輸出管理に関しては、7月1日の半導体材料3品目に続く厳格化の措置となる。

経産省は政令改正に当たって、輸出管理における国別カテゴリーの名称を見直し、「ホワイト国」の名称を使わないことも決定。「より実態に即した分類にする」ため、「ホワイト国」「非ホワイト国」の2種類だった従来のカテゴリーを4段階とし、輸出管理制度が整っている国から順にグループA、B、C、Dに再分類した。韓国はエストニアなどと同じグループB、シンガポールや台湾はC。

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世耕経産相は会見で、政令改正への意見募集では4万件超の意見が寄せられ、賛成が95%超に上ったことを明らかにするとともに、他のアジア諸国と同様の扱いに戻すだけで、禁輸ではないと指摘した。また米国には十分説明してきたと述べた。

経産省は会見後、「自由貿易を阻害するものではないが、審査の時間はかかる。事業者への一定の負担は増える」と説明、韓国向け輸出審査の期間が長引くことを認めた。影響が出る具体的品目名や品目数については「一概に言えない」としている。

韓国側は日本政府に措置の撤回を求めており、康京和外相は1日、河野太郎外相との会談後、ホワイト国からの除外は「深刻な影響」を与え、韓国は必要な対抗措置を取ると記者団に語った。両国の安保協力の枠組みを見直さざるを得なくなるとも述べ、日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)継続見直しの可能性も示唆した。

河野外相は同日、記者団に対し、日韓関係を巡る問題は日本企業に元徴用工への賠償を命じた韓国大法院(最高裁)判決が「国際法違反の状況を作り出していることにある」として、韓国政府に「速やかな是正措置を取ってほしい」と語った。

菅義偉官房長官も2日の記者会見で、日韓関係の現状について「これまで韓国側からの否定的な動きが相次ぎ、非常に厳しい状況にある」との認識を示した上で、さまざまな問題に「引き続き適切な対応を強く求めていく考えに変わりはない」と語った。

2日夕には日米韓の外相による3者会談が予定されており、ポンぺオ米国務長官は日韓両国に緊張緩和を呼び掛ける考えを示している。世耕経産相は会見で「米国に対しては今回の見直しについて詳しく説明してきている」と述べた。

日本総合研究所の向山英彦・上席主任研究員は、ホワイト国除外後の具体的な運用はまだ不明で、韓国経済への影響は「今のところ分からない」と指摘。対立が長期化し、仮に韓国側がGSOMIAを破棄するなど安全保障に関わる事態に発展すれば米国が何らかの介入に動くとの見方も示した。