8月30日、ロンドンの英首相官邸でイベントに出席するジョンソン首相(AFP時事)

 【ロンドン時事】欧州連合(EU)からの「合意なき離脱」も辞さないジョンソン英首相と、「合意なし」に反対する与野党議員らが週明けの議会で激突する。離脱期限が10月末に迫る中、首相は9月第2週から10月中旬まで議会を長期閉会とすることを決定。口封じに遭った形の反対派は、離脱延期の実現へ短期決戦を挑む構えだ。

 「合意の有無に関係なく、10月末に何としてもEUから離脱する」。首相は7月下旬の就任以来、ことあるごとに固い決意を繰り返してきた。

 背景には、当初3月末の予定だった離脱をこれ以上先送りすると、与党・保守党が信用も支持者も失うという危機感がある。EUからの独立を重視する強硬離脱派を主要閣僚に据えた布陣は、さながら「戦時内閣」(英メディア)の様相だ。

 一方の反対派は、EU残留派と穏健離脱派の寄り合い所帯。「合意なき離脱」の阻止では一致しても、最終的な目標が異なるため、足並みの乱れが懸念される。

ハモンド英前財務相=7月24日、ロンドン(EPA時事)

 最大野党・労働党幹部によると、ハモンド前財務相ら保守党の「反ジョンソン」勢力と連携して多数を確保し、離脱延期をEUに要請するよう首相に強制する議員発議の法案の可決を目指す。これに対し、政府・与党は議事妨害で時間切れに持ち込む作戦を視野に入れており、攻防の行方は見通せない。

 ハモンド氏と行動を共にするガーク前司法相は、下院が約1カ月の夏季休会を終える9月3日から閉会を迎えるまでの1週間程度が「(合意なき離脱を阻む)唯一のチャンス」になるという認識を示した。

 反対派はこれに失敗しても、ジョンソン内閣に不信任を突き付ける最後の手段が残されている。ただ、首相は不信任でも辞職せず、総選挙に打って出る可能性がある。投票日が首相の意向で11月以降に設定されれば、「合意なし」は阻止できず、選挙戦中にEU離脱を迎えるという「悲喜劇」もあながち否定できない。

 首相は反対派の懐柔を狙い、EUとの離脱協議の「テンポを速める」と表明した。10月末までに交渉がまとまれば「合意なき離脱」を回避できるからだ。しかし、首相とEUの溝は深く、話し合いは物別れとなる可能性が高いとみられている。