[ワシントン 5日 ロイター] – 5日に発表された一連の米経済指標で、8月は非製造業部門の活動が活性化し、民間部門の雇用増のペースも加速していたことが分かった。通商を巡る緊張の高まりで金融市場ではリセッション(景気後退)入りの懸念が出ているが、米経済が緩やかなペースで拡大し続けたことが示唆された。 

米供給管理協会(ISM)が5日発表した8月の非製造業総合指数(NMI)は56.4と、2016年8月以来の低水準だった7月の53.7から上昇した。通商面での懸念がくすぶる中、新規受注が2月以来の高水準となった。 

ロイターがまとめたアナリスト予想は54.0だった。指数は50が判断の分かれ目となる。 

内訳では新規受注指数が60.3と前月の54.1から上昇。一方、雇用指数は53.1と前月の56.2から低下し、17年3月以来の低水準だった。 

ISMは「関税措置のほか、地政学的な懸念は払拭されていない」としながらも、「企業は事業環境についておおむね前向き」とした。 

ISMが3日に発表した8月の製造業景気指数は49.1と、前月の51.2から低下し、2016年8月以来初めて景気拡大・縮小の節目となる50を割り込んだ。米中貿易摩擦が企業業況感の重しとなる中、内訳の新規受注や雇用が悪化し、全体が圧迫された。 

この日に発表された指標は堅調だったものの、通商問題で企業信頼感が損なわれる中、米連邦準備理事会(FRB)は17─18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利下げを決定するとの見方が大勢となっている。 

MUFG(ニューヨーク)の首席エコノミスト、クリス・ラプキー氏は「通商問題を巡る先行き不透明性が極めて高いことで一部で企業信頼感が悪化した。ただ企業はこれまでと同様、従業員の解雇には踏み切っておらず、むしろ雇用を増加させている」と指摘。「リセッション下では通常こうしたことは見られない」と述べた。 

雇用関連の指標では、企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)とムーディーズ・アナリティクスがこの日発表した8月の全米雇用報告は、民間部門雇用者数が19万5000人増と、ロイターがまとめたエコノミスト予想の14万9000人増を上回った。 

エコノミストの予想レンジは11万─17万5000人増。7月分は14万2000人増と、当初の15万6000人増から下方修正された。 

このほか労働省発表の8月31日終了週の新規失業保険申請件数(季節調整済み)は前週比1000件増の21万7000件と、小幅な増加にとどまった。景況感に打撃を与え製造業の重しとなっている貿易摩擦が労働市場に大きな影響となっていないことを示唆した。市場予想は21万5000件だった。 

6日には労働省が8月の雇用統計を発表。ロイターがエコノミストを対象に実施した調査では、非農業部門の雇用者数は前月比15万8000人増、失業率は3.7%との予想が示されている。 

このほか労働省が発表した第2・四半期の非農業部門の労働生産性(改定値)は年率換算で前期比2.3%上昇し、第1・四半期の3.5%上昇から鈍化した。速報値から改定はなかった。市場予想は2.2%上昇だった。 

第2・四半期は製造業の生産性が2.2%低下し、全体を抑制。2017年第3・四半期以来の大幅な落ち込みとなった。速報値は1.6%低下だった。第1・四半期は1.2%上昇していた。