米大統領選挙に向けた民主党の候補者選びはあす(12日)、テキサス州ヒューストンで再開される。乱立気味だった候補者が10人に絞られ、本格的な論争が展開される。焦点の一つは経済。トランプ大統領は好調な経済をバックに来年の大統領選を戦い抜こうとしている。だが、強い大統領を象徴するはずだった米中貿易戦争は思惑通りには進展せず、野党・民主党にも付け入る隙をあたえた。そんな中で注目されるのが富裕税の行方だ。バイデン、サンダース両候補を追い上げているエリザベス・ウォーレン上院議員(マサチューセッツ州)が提唱しているもの。一部の人に巨万の富が集中している現状を変えるためには、どうしても必要な税だと思うが、意外に支持は少ないようだ。
ブルーンバーグによると「カリフォルニア大学バークレー校で教壇に立つエマニュエル・サエズ、ガブリエル・ザックマン両教授は、富裕税が1982年に適用されていた場合、米国の最富裕層上位15人の純資産は半分以下に縮小し、資産額は4339億ドル(約46兆5400億円)に減少していた」との試算を公表した。現在の純資産が総額でどのくらいあるのかこの記事ではわからないが、類推すれば9000億ドルから1兆ドル規模になるだろう。なんということだ。記事を読んでいるだけでため息が出てくる。仮に富裕税が導入されていたとしても、4300億ドルという資産が15人の富裕者に集中している。これだけやっても格差が残る。それ自体がそもそも異常としか言いようがない。
ウォーレン候補の富裕税案は「米国の(高額所得者)上位7万5000世帯に対し、純資産が5000万ドルを超える部分に1ドル当たり年間2%の税金、10億ドルを超える部分については1ドル当たり年間3%の税金を支払う」(ブルームバーグ)というものである。ただしこの税の欠点は、資産隠しで徴税回避が簡単にできることだ。新税の導入が大変な割に、資産隠しは簡単にできる。タックスヘイブンに避難するというのは極端にしても、資産家は専門家を雇って資産の分散化を進めたり投資に衣替えしたり、資産隠しを行うだろう。米国に限らず日本もそうだが、資産を丸ごと把握するのは意外に難しいのである。対策としてはITを組み合わせた制度を作るしかない。日本には幸いマイナンバーがある。これを活用すれば資産(タンス預金を除く)は簡単に把握できる。米国に先行して富裕税を検討するのも手だ。
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