[ワシントン/イスタンブール 7日 ロイター] – トランプ米大統領は7日、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国であるトルコが計画するシリアでの軍事行動に行き過ぎがあった場合、トルコ経済を壊滅させると警告した。 

トランプ大統領は6日、トルコのエルドアン大統領と電話会談。ホワイトハウスの報道官はその後発表した声明で、トルコが長く計画してきた安全地帯設置に向けた軍事作戦を近く行うとした上で、米軍は関与も支援もしないと表明。域内に拘束されているすべてのIS戦闘員については、今後はトルコが責任を持つことになるとした。 

シリアに展開する米軍部隊は7日、同国北東部から撤収を開始。米軍撤収を受け、トルコは国境を接するシリア北部に計画する「安全地帯」設置に向けて少数派民族クルド人勢力を同地域から排除する軍事作戦に動く見通し。米政府はこれまでシリア北部で過激派組織「イスラム国(IS)」と戦うクルド人勢力を支援してきており、大規模な政策転換となる。 

トランプ大統領はツイッターへの投稿で、トルコが「禁じ手」に出ることがあれば、トルコ経済を「壊滅させる」ともけん制。「これまでにも強く言ってきているように、偉大で比類ない知恵を持つ私が禁じ手と見なす行動にトルコが出れば、私はトルコ経済を完全に壊滅させる(私は過去にも壊滅させた!)」と述べた。 

一方で、米国は「ばかげた終わりなき戦いから脱する時だ」と指摘。ISと戦うクルド人勢力の支援には多大なコストがかかるとし、「今後はトルコ、欧州、シリア、イラン、イラク、ロシア、クルド人勢力が問題に対処すべきだ」と述べた。 

トルコ軍によるシリア北部への軍事作戦への懸念のほか、トランプ氏の投稿を受け、トルコリラは2%超下落し、対ドルで1カ月超ぶりの安値を付けた。 

IS掃討作戦で米国に協力してきたクルド人民兵組織「人民防衛部隊(YPG)」を含む「シリア民主軍(SDF)」の報道官は「米国の発表は驚きで裏切り行為」と表明。「米軍は任務を果たすことなくシリア・トルコ国境地帯から撤退し、トルコはシリア北部・東部侵攻作戦の用意を整えている」とし、米軍撤収は「同地域を戦場に陥れる」と批判した。 

民主党のペロシ米下院議長は米軍撤退の決定について、地域の治安を脅かし、同盟国のほかイランやロシアに対し、米国がもはや信頼できる連携国ではないというメッセージを送ったと非難した。 

身内の共和党もマコネル上院院内総務が「シリアからの早急な米軍撤退はロシアやイラン、アサド政権を利するだけだ。ISや他のテロ組織の再編リスクも増す」との声明を出した。 

また、フランス政府はIS復活につながる可能性があるとし、パルリ国防相は「米国の撤退とトルコの軍事作戦によりわれわれが求めるISとの戦いという目標から離れた危険な行動を生み出さないよう極めて慎重に対応する」と述べた。 

グテレス国連事務総長もシリア北東部のあらゆる関係組織に対し最大限の自制を求めていると、広報担当が明らかにした。 

一方、米国務省当局者は、トルコが計画するシリア北東部での軍事作戦について「いかなる形でも」賛同しないと明言。「作戦は非常にまずい案だと考えている」とし、地域の安全を脅かすと述べた。