[ワシントン 31日 ロイター] – 米下院本会議は31日、ウクライナ疑惑を巡るトランプ大統領の弾劾調査を次段階に進める決議案を賛成多数で可決した。これにより、民主党主導の下院は弾劾調査で公開証言などを行うことが可能になり、大統領の弾劾訴追に向けた主要なハードルを初めてクリアした。 

決議案は賛成232反対196で決定。野党・民主党からは2人が造反したが、共和党から造反者は出なかった。 

トランプ大統領はツイッターへの投稿で「米史上最大の魔女狩りだ!」と反発。さらに英LBCラジオとのインタビューで、民主党は来年の選挙で負けると分かっているため、自身を打倒しようとしているとし、「民主党は死に物狂いだ」と述べた。 

ホワイトハウスのグリシャム報道官は、下院で進められている手続きを「不公正かつ違憲で、根本的にアメリカ的でない」と批判した。 

決議案では、下院情報特別委員会が関係者の聴取を公開で実施するほか、最終的な訴追勧告について判断する下院司法委員会の手続きにトランプ氏の弁護士の参加を認める内容が盛り込まれている。また、これまで実施された非公開証言の記録公開も認める。 

下院司法委員会のナドラー委員長は、公開証言の開始日について言及を避けたものの、数週間以内に開始する見通しとした。 

米大統領選を来年11月に控える中、公開証言のテレビ放映によってトランプ大統領の形勢は不利となる可能性がある。しかし、トランプ支持派の間からは、弾劾機運の高まりによってトランプ大統領が議員らと渡り合う姿が示され、再選の確率が高まる可能性があるとの指摘が聞かれた。 

採決が行われる前、ペロシ下院議長は「悲しい日だ。大統領を弾劾するため議会に来る者はいない」と述べた。 

下院委員会は、トランプ大統領が軍事支援の見返りに政敵である民主党のバイデン前副大統領と息子を調査するようウクライナのゼレンスキー大統領に圧力を掛けたとされる疑惑を巡り弾劾調査を進めている。これまでに調査の一環で、政府関係者らの非公開証言が行われている。 

この日は、ウクライナ疑惑の発端となったトランプ大統領とゼレンスキー大統領の電話会談を聞いていたとされる国家安全保障会議(NSC)のロシア担当高官だったティム・モリソン氏が非公開証言を行った。CBSニュースが入手した冒頭証言の原稿によると、モリソン氏は電話会談で違法な協議が行われたとの懸念はなかったと主張した。政府高官によると、同氏は前日辞任した。 

また、下院委はジョン・ボルトン氏前大統領補佐官(国家安全保障問題担当)に対し来週証言するよう要請している。ボルトン氏の弁護士によると、同氏は召喚状を受け取らない限り証言には消極的という。 

下院で弾劾訴追の決議案が可決されれば、上院で弾劾裁判が行われる。しかし、共和党が過半数議席を握る上院でトランプ大統領の罷免に必要な議員3分の2の賛成を得るのは難しいとみられる。