16日、テヘランで、炎上する車の周囲に集まるデモ隊(AFP時事)
16日、テヘランで、炎上する車の周囲に集まるデモ隊(AFP時事)

 【カイロ時事】イランで政府が事前予告なしに実施したガソリン価格の引き上げに対する抗議デモが各地に波及し、報道によれば17日までに市民や警官ら数人が死亡、多数が負傷した。市民の間では現指導部を批判する声も高まっているもようで、政府は「治安部隊の動員もあり得る」と警告。インターネットの規制を強めるなど、抗議行動の拡大に神経をとがらせている。

 イラン政府は15日、ガソリン価格を1.5倍に突如値上げし、自動車1台当たりの購入量が1カ月で60リットルを超える分は3倍の価格を適用した。イランは米国の経済制裁で通貨が暴落。物価も高騰して経済は苦境にあえいでおり、国際通貨基金(IMF)によれば、今年の経済成長率はマイナス9.5%に低迷する見通しだ。

 この値上げに反発するデモが16日、首都テヘランや北東部マシャドなどで拡大。デモ隊は道路の封鎖や、燃料保管庫に火を放つなどしたほか、交流サイト(SNS)では市民が「独裁者に死を」と気勢を上げる動画も投稿された。地元メディアは17日、過去2日間で約1000人が拘束されたと伝えた。

 警察は催涙ガスなどで排除を試みたものの、収束に向かうかは不透明だ。ラハマニファズリ内相は16日に国営テレビで「治安部隊は抑制した対応を講じてきたが、公共財への襲撃が続けば事態沈静化のために動く」とけん制。最高指導者ハメネイ師も17日、値上げへの支持を表明した上で「決定に不満を抱く人もいるだろうが、破壊行為は暴徒の行うことだ」と非難した。

 イランでは2017年12月から翌月にかけても反政府デモが全土に広がり、市民や治安部隊に20人以上の犠牲者が出た。