- 中国当局は経営難の借り手救済や刺激策強化に慎重-代償大きく
- 支援策は短期的に景気安定にプラスも債務問題の深刻化招くリスク
中国では地方銀行の取り付け騒ぎや消費者の債務急増、公有企業としては異例の債務再編計画など、金融ストレスを示す兆候が増えており、中国当局の政策運営が試される局面となっている。
習近平指導部はモラルハザードや見境のない支出を招かずに景気を下支えすることを目指すが、政策のかじ取りはますます難しくなっている。中国当局はこれまでのところ経営難の借り手救済や刺激策強化に慎重姿勢を保っているが、デフォルト(債務不履行)が増え、国内景気が一段と減速する中、こうしたスタンスを維持する代償も高まりつつある。
ゴールドマン・サックス・グループのアジア太平洋担当チーフエコノミスト、アンドルー・ティルトン氏はブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、中国当局は景気が軌道から外れないようにするため「必要最低限」のことをやろうとしていると話す。
中国にとって最も大きな難題の一つは、規模が小さめの銀行や地方の公有企業の健全性が悪化していることだ。中央政府が支援に乗り出さなければ、両者の金融面のつながりが下方スパイラルのきっかけとなる恐れもある。
市場は落ち着き
投資家は今のところ中国当局が国内の金融リスクを抑制し、今後も景気を下支えできると見込んでいる様子だ。
60億ドル(約6570億円)規模のドル建て国債の起債では申し込み超過となり、中国株式相場のボラティリティーは2018年の早い時期以来の低水準まで下がっている。米国との貿易合意を巡る楽観的な見方が一因だ。「AAA」格の国内銀に対する格付けがそれよりも低い銀行の譲渡性預金(CD)の利回り格差はこの数カ月縮小しており、中小銀行の資金調達環境が改善しつつあることを示している。
財政省は27日、インフラ事業資金を調達する特別債(専項債)の発行を加速するよう地方政府に指示したと発表した。景気の下振れリスクを巡り当局が懸念を強めている可能性を示唆している。
今回の動きで中国指導部が直面する政策面のジレンマがあらためて浮き彫りになった。こうした支援策は短期的に景気や金融の安定を後押しする一助となる可能性がある一方、より長い目で見ると債務問題の一段の深刻化につながるリスクもある。
北京大学でファイナンスを教えるマイケル・ペティス教授は、中国当局が市場に規律を持ち込もうとしてきたが、そのたびに影響が恐ろしくなり腰が引けていたと指摘。「この解決に手間取れば手間取るほど、市場のゆがみはひどくなり、解決に伴う痛みも大きくなっていく」と語った。
原題:
China’s Financial Warning Signs Are Flashing Almost Everywhere(抜粋)