きのうこの欄で自民党の経済対策を取り上げた。その中に小中の全児童・生徒に2023年度までに、パソコンなど情報端末を1人1台配布するための事業費が盛り込まれた。総事業費用は5000億円。世の中ではデジタル化が急ピッチで進んでいる。諸外国に比べやや遅きに失した感はあるが、日本の将来を考えると久々に明るいニュースだ。この事業を水面下で推進してきた自民党幹部や総務省高官とたまたま昨日飲む機会があった。端末配備に時間がかかった背景には教師、つまり教える側のリテラシーの低さと人出不足という問題があるという。そういう中で労力を惜しまなかった関係者の努力に敬意を表すると同時に、個人的には「案ずるよりも生むがやすし」で、「まずやってみる」そんな姿勢がこれからのデジタル時代には必要だという気がした。

教師をしていた友人によるとパソコンやスマホに限らず、年配教師のICTリテラシーは決して高くないそうだ。デジタル化やICT化はこの10年飛躍的なスピードで進歩した。こうした動きについていけなかった教師がいたとしても不思議ではない。仮にそうだとしてもパソコンの配備を躊躇する必要はないと思う。個人的な経験だが私の孫が3〜4歳の頃、母親のスマホを使って会社で会議中だった私に電話をかけてきたことがある。会議室を出てスマホに出て驚いた。「ジィジ何してるの」、孫からの電話だった。使い方を理解していたわけではない。母親が使っているのを真似して見様見真似でかけてきたのである。教師が手取り足取り教えなくも、子供は子供で学習していく。どうやって教えるかを考える前にまず与える、IT時代はそんな時代のような気もする。

そんなことを考えながらNHKのサイトを見ていたら、日本の子供の読解力が後退しているというニュースがあった。世界各国の15歳の学力を測る国際学力調査によると、日本の子どもは科学と数学でトップレベルを維持ししたが、課題とされている読解力は前回より7ランク低い15位に後退したという。これは「PISA(ピザ)」と呼ばれている国際的な学力調査。OECD(経済協力開発機構)が世界中の15歳の少年少女を対象に科学と数学、それに読解力を測定するため、3年に一度実施している。今回の調査は昨年実施され、世界79の国と地域から60万人の子どもが参加した。この調査結果を巡って教育専門家の間には読解力をつける教育はどうあるべきか、様々な議論があるようだ。孫の電話を思い出しながら、とりあえず教える前に試行錯誤させてみる、そんな中で読解力は養われるのではないか、なんとなくそんな気がした。