護衛艦「たかなみ」(海上自衛隊ホームページより)=共同

安倍晋三首相は6日の年頭記者会見で、米軍によるイラン革命防衛隊司令官の殺害で緊迫する中東情勢を巡り、自衛隊の中東派遣方針に変更はないとの認識を示した。日本にとって中東は原油輸入の9割近くを依存する重要な地域だ。日本政府は緊張緩和に向けた独自の外交努力を続ける。

首相は「情報収集体制を強化するため、自衛隊を派遣し、日本関係船舶の航行の安全を確保する」と改めて表明した。「わが国はこの地域にエネルギー資源の多くを依存している」と理解を求めた。イラン国内で英雄視されるソレイマニ司令官の殺害への評価に関しては直接言及しなかった。

日本政府は2019年12月、防衛省設置法に基づく「調査・研究」目的で、自衛隊を派遣する方針を閣議決定した。護衛艦「たかなみ」は20年2月、P3C哨戒機は月内にも出発する。活動範囲はオマーン湾、アラビア海北部、バベルマンデブ海峡東側のアデン湾の3海域の公海で、イランに面するホルムズ海峡などは対象から外している。政府関係者は米国とイランの対立激化を受け「情報収集のために自衛隊を派遣する意義はむしろ高まった」と語る。

年頭の記者会見をする安倍首相(6日午後、三重県伊勢市)=共同

年頭の記者会見をする安倍首相(6日午後、三重県伊勢市)=共同

首相は1月中にサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を訪問する方向で調整している。年頭会見では「地域の緊張緩和と情勢の安定化のためにこれからも日本ならではの外交を粘り強く展開する」と意欲を示した。日本は米国と同盟を組んでいるが、イランとも伝統的な友好関係を築いてきた。19年12月にはイランのロウハニ大統領が来日し、首相は核合意逸脱に「深刻な懸念」を伝えた。

日本はイランと米欧などの核合意に参加しているわけではない。複雑な中東情勢に及ぼせる影響力は限られる。19年6月には首相のイラン訪問を狙ったかのようなタイミングで、日本の船舶などのタンカーがホルムズ海峡近くのオマーン湾で何者かに攻撃を受けた。

中東情勢の緊迫化は自衛隊派遣に対する日本国内の世論に影響する可能性もある。立憲民主党の枝野幸男代表は4日の記者会見で「こんな状況の中東に自衛隊を国会の審議もなく、調査目的で送り出すのは、自衛官の安全を含め大変由々しき事態だ」と批判した。