[ワシントン 15日 ロイター] – 米連邦準備理事会(FRB)は15日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)で、米経済が2019年末までの6週間に緩やかに拡大したとの認識を示した。 

またベージュブックは「多くの地区で関税や貿易を巡る不透明感は引き続き企業への重しになった」と指摘した。 

トランプ米大統領と中国の劉鶴副首相はこの日、ホワイトハウスで「第1段階」の通商合意文書に署名した。両国は18カ月にわたり関税の応酬を続け、これにより世界的に供給網が乱れ世界経済が減速した。 

FRBは昨年、3年間続いた利上げサイクルから反転し3回利下げした。パウエルFRB議長は利下げについて、過去最長期間続く景気拡大を持続させるために世界経済の減速や貿易摩擦、緩やかな物価上昇圧力に対する保険をかける意味合いがあると説明した。 

FRB当局者はその後、利下げが奏功して景気が改善しているほか米中貿易摩擦の緩和を指摘し、当面は金利を据え置く姿勢を明確にしている。ただ、米国は第2段階合意まで中国に対する制裁関税を維持する方針で、FRB当局者は第1段階の合意は企業の不安を解消しないと警告している。 

第1段階の合意が署名される前にまとめられた今回のベージュブックでは、多くの地区で企業が苦戦していることが示された。リッチモンド地区は、多くの製造業者が主要な不安材料として貿易摩擦を挙げたと指摘した。「いくつかの企業は最終財を値上げしたが、原材料への関税で利幅が低いことで苦戦した」と報告した。 

一方、米中合意の見込みで幾分期待は高まった。シカゴ地区は「農家の見通しが改善した」と報告。ダラス地区は「見通しは総じて改善した。貿易を巡る先行き不透明感の後退で前向きな見方が出てきた」とした。 

物価は比較的抑制された。価格は控えめに伸びたほか、失業率が約50年ぶりの低水準にあり、広範な部門にわたり企業が労働力不足を指摘する中でも、賃金はほとんどの地区で控えめから緩やかなペースで伸びた。 

多くのFRB当局者はインフレ期待が低下していることへの不安が高まっている。FRBは物価上昇率の目標を2%としているが、設定した2012年以降、物価の伸びは常に目標を下回ってきた。 

14日発表された19年12月の米消費者物価指数(CPI) は市場予想をやや下回ったほか、コアCPIは鈍化した。 

今回のベージュブックは、ニューヨーク連銀が1月6日までに入手した情報に基づいてまとめた。