• GDP押し下げは野村総研0.14-0.45%、三菱モルガンは0.2%と試算
  • インバウンド需要の変化を通じて日本経済に与える影響大きい
CHINA-HEALTH-VIRUS
Photographer: NICOLAS ASFOURI/AFP

急速に広がる新型コロナウイルスによる肺炎は、2002-03年に発生した重症急性呼吸器症候群(SARS)よりも日本経済に打撃を及ぼす可能性があると、エコノミストらは試算している。

  野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは27日付リポートで、インバウンド需要の変化を通じて日本経済に与える影響を試算した結果、訪日外国人観光客数がSARS発生時と同じ割合で減少した場合、日本の国内総生産(GDP)を0.14%押し下げると試算した。

  SARSの影響は数カ月程度にとどまったが、かなり深刻な影響が生じた03年5月と同程度の影響が1年間続くと仮定すると、日本のGDPを2兆4750億円、割合として0.45%押し下げる可能性があると木内氏は算出している。

  アベノミクスの明確な成功例の一つであるインバウンド観光。訪日外国人旅行客数は19年に3188万人に増え、第二次安倍内閣が発足した12年に比べ3.8倍に増えた。これに伴い、インバウンド消費は18年には4兆円を上回り、対名目GDP比は0.8%に達している。

  三菱UFJモルガン・スタンレーの戸内修自シニア・マーケットエコノミストも24日のリポートで、インバウンド消費が03年4-6月期と同程度減少すれば、GDPは0.2%ポイント押し下げられる可能性があると試算。「仮に新型肺炎の感染が拡大し、人の移動が停滞すれば、インバウンド消費減少を通じたマイナスの影響は03年を上回ることになる」と予想している。

  新型コロナウイルスによる中国本土の死者は27日時点で少なくとも80人に達し、全土での感染症例は2744件に達した。中国当局は30日に終わる予定だった春節連休を2月2日まで延長したほか、海外への団体旅行を27日から全て禁止、感染拡大を食い止めようとしている。

  東海東京調査センターの平川昇二チーフグローバルストラテジストは27日付のリポートで、「春節というタイミングや海外渡航者の広がりなど中国の存在感の高まりを考えると景気への影響は大きくなろう」と述べた。

コロナウイルス感染者死者期間地域
SARS8098人774人2002年11月~03年7月32カ国・地域
MERS2494人858人2012年9月~27カ国・地域

※上記表の出所:厚生労働省・国立感染症研究所